自民幹部「安倍おろしの声出るかも」 首相の求心力低下
http://www.asahi.com/articles/ASK725RNTK72UTFK00F.html
 自民党が歴史的敗北を喫した。選挙戦では安倍晋三首相の政権運営が問われたこともあり、首相の求心力が低下するのは必至
政権幹部らは首相の責任問題との切り離しに躍起だが、自民党内では首相への批判勢力が声を上げ、野党は政権批判を強める構えだ

 麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官、甘利明元経済再生相と約2時間の会食を終えた首相は記者団の呼びかけには答えず、左手を上げたまま無言で立ち去った

 出席者によると、会食では都議選について「結果は予想以上にひどい」との認識で一致

 麻生、菅、甘利3氏は、第2次安倍政権の発足から甘利氏が現金授受問題で閣僚を辞任するまで政権中枢を担ってきた
今回の大敗は、その政権「原メンバー」が一堂に会さねばならないほどの衝撃だった

 選挙結果に、党内からは「想像を絶する状況だ」(ベテラン議員)
石破茂・前地方創生相は「都民ファーストが勝ったというより自民が負けた。自民にプラスになることが何もなかった」と分析
柴山昌彦首相補佐官も「自民党の自滅。おごりや危機管理に問題があった」と語った

 首相が主導する「安倍1強」は「結果を出すこと」にこだわり、国会では議論を途中で打ち切る採決強行を多用した
自民の中堅議員は、自民大敗の原因をこう分析する
「加計問題などによる一時の突風ではなく、安倍政権の強引な手法という根源的な問題によるのではないか」

■改憲・総裁選、不透明に

 都議選の惨敗で、自民党内では首相と距離を置く議員らの反発が強まるのは必至だ
「安倍1強」を背景に進めてきた政権運営も練り直しを迫られそうだ

船田元・自民党憲法改正推進本部長代行は2日夜、朝日新聞の取材に「自民案を押しつけることは国民の反発を受ける可能性がある
これまで以上に公明党や野党との対話を重視し、丁寧に手続きを進める必要がある」とコメント
都議選大敗で党内には慎重論が広がりそうで、首相周辺は「憲法改正の戦略は出直して考えざるを得ない」と話す

 来年9月の党総裁選での「3選」への道のりも険しくなりそうだ
「安倍首相の後は安倍首相」(二階俊博幹事長)と3選を確実視する見方が強かったが、
政権の経済政策に批判的な議員の勉強会が5月に立ち上がるなど、政権中枢と距離を置く動きが顕在化
衆院ベテラン議員は「第1次政権では参院選に負けて『安倍おろし』が始まった」と語り、都議選惨敗で首相の求心力低下は必至だ

■公明、増す存在感

 「ポスト安倍」と目される候補たち。岸田文雄外相ら自民党岸田派の幹部は2日夜、都内の事務所に集まった
「今は憲法9条の改正は考えない」と語っていた岸田氏。都議選が憲法改正に与える影響を記者団に問われると、「信頼回復への努力から始めなければならない」と語る

 石破氏は朝日新聞の取材に「党本部は関係ないとはならない。負けたことを総括しないと次も負けるぜ」
別の石破派幹部は「すべては安倍さんが招いた」と首相を批判した

 野田聖子・元総務会長は取材に「批判、失望、積もった思いの表れだ
かけ声や勢いで政権を運営してきたが、国民の声を聞いて出直すしかない」と述べた

 首相自らを直撃した加計学園問題で内閣支持率が下がり、都議選敗北に直結
ある党幹部が「『安倍おろし』の声が出るかもしれない」と漏らすように、「安倍1強」下で抑えられてきた首相批判が表に出やすくなることは確実だ

 都議選で自民とたもとを分かった公明党との関係も変質しそうだ
首相官邸は、これまで集団的自衛権の行使を認める憲法解釈変更やカジノ法など公明が嫌がる政策を押し切ってきたが、
次の衆院選で共闘を強める野党を迎え撃つにはこれまで以上に公明との選挙協力が不可欠だ。自民中堅はいう
「公明がいないと選挙に勝てないと分かった。公明の存在感が増す」

 都議選の結果は「自民1強」が、自民以外の選択肢があれば簡単に崩れることを示した
野党は、大型選挙での「直近の民意」という武器を得た。政権がこれまで通り採決強行を繰り返すことは難しくなりそうだ

 一方、民進は告示前に離党者が相次ぎ、「獲得議席ゼロの可能性もある」(党幹部)とささやかれていた
形勢を立て直すため、選挙戦では街頭に党幹部を大量投入して政権批判を展開
同党の蓮舫代表は「日を追うごとに、立ち止まってくれる人が多くなった」
野田佳彦幹事長は都内で記者団に「安倍政権にノーの意思が示された結果だ。わが党の追及に一定の効果があった」と振り返った