二回投票制 - フランス下院の実例 @Wiki

ただし、よくこの典型例とされるフランスの国民議会(下院)の選挙においては、現在の規定では決選投票に進むのは単純に小選挙区の上位二者というわ
けではなく、8分の1以上の得票をした候補者(正確には有効得票の50%超(2分の1)かつ登録有権者の25%以上(4分の1)の得票を得た候補がいない場
合において、登録有権者の12.5%(全体の8分の1)以上の得票を得た候補。
ただし、この条件を満たす候補が誰もいないか1人しかいない場合は、上位二者)となっている。
そのため決選投票においては三つ巴の選挙戦となり、絶対多数ではなく相対多数で決まる場合も多い。
これまでモーリス・デュヴェルジェやジョヴァンニ・サルトーリらの研究により、この制度は複数政党制(一党優位政党制やヘゲモニー政党制に陥らない意
味での多党制)や小政党の存在を最初の投票で容認・維持しつつ、二回目の決選投票では次善の候補者への投票を促すことにより少数意見をある程度
は反映させながら二大政党制に近い二大政党連合制を継続的に実現できる、優れた制度とみなされてきたが、特に最近はゴーリストなどの系譜を引く右
派(現在は国民運動連合に結集している)と社会党・共産党などの左派の二大勢力だけでなく、これらとの協力をしない極右・国民戦線の進出により、この
前提が崩れてきている。
またフランソワ・バイル率いる中道新党・民主運動も決選投票に残った場合に左右両派との協力をせず、独自の選挙戦を続けることがある。

また、過去のフランスでは第三共和政の時代から下院選挙に二回投票制を使うことが多かった。
しかし当時は左右両派からそれぞれ有力候補を絞り込むのではなく、中道の政党として左翼・右翼(保守)の両派から幅広く集票できる急進社会党に有利
に働き、同党が第三共和政で中核的な政治的位置に君臨する要因となっていた。
この違いは第三共和政が(第五共和政の半大統領制と異なり)議院内閣制を採用しており、首相を信任する下院の力が大きかったためだという。