19世紀後半以降の戦争においては、不正規兵(正規軍に属さない民兵団・軍服を着用せずに敵対行為
を行う者・ゲリラなど)が目立ち始めたということでしょう。こういう状況になると戦闘中の当時国と
しては軍民の区別ができなくなるので、何を規準に攻撃したらよいのか判断できなくなります。
 民間人だと思って油断していると、いきなり攻撃されたりするわけですから、「民間人の服装をして
いてもあやしい者は敵と推定して攻撃する」という状況になり、結果として一般市民への被害が拡大
するという凄惨な事態になります。

 これを改善する為に、「戦闘する者」と「民間人」とを区別しようと規定されたのが交戦者資格です。
だからこそ軍服の着用などで、遠くからでも民間人と誤認されないよう、戦闘する者として明確に識別
可能である事(軍服の着用など)が正規の交戦者たる条件になったわけです。

■正規の交戦者には権利と義務が付随しています。
制服などの着用を前提として
(1)発見され次第、敵として相手国に攻撃される義務。
(2)投降・降伏した場合は捕虜として扱われる権利。

 (1)「攻撃される義務」についは、正規軍に所属する、もしくは何らかの軍事組織
(民兵団や義勇兵団など)に所属した段階で発生します。武装の有無や服装は関係ありません。
例えば、正規軍に所属している以上、たとえ経理事務などの担当で武器を所持していなくても、
戦場においては敵兵とみなされ攻撃を受けるということになります。軍隊(軍事組織)に
所属しているということで「敵対する意思があるとみなされる」からです。

 軍服を脱いだからといって攻撃を受ける義務を免れるものではありません。軍服を脱いだとしても、
軍事組織から脱退したとは認められませんから、敵対行為を行なう意思がある者として扱われます。
「攻撃される義務」から逃れるには、正規の手続きで除隊(軍事組織から脱退)する必要があると
考えられます。しかし、実際の戦場でそれは不可能なので、投降・降伏し「敵対意思がない」ことを
明示した場合、ハーグ4条件を満たした正規の交戦者であれば)捕虜として扱われます。ハーグ要件を
満たしていない正規軍人が投降した場合は、捕虜としては扱われずに、違法な交戦者、戦時犯罪者と
して扱われます。(捕虜にしてもいいが、国際法上強制されない)