【「合憲判断」できず】

「判決文は107ページあるが、裁判所の判断はわずか10ページほど。
違憲性については何一つ判断せず、原告らが侵害されたと主張する権利・権益については
〈平和とは抽象的概念〉〈具体的な危険が発生したとは認めがたい〉〈個人の損害とは言えない〉などとして訴えを棄却した」

判決後に東京地裁内の司法記者クラブで会見に臨んだ原告側代理人の福田護弁護士はまず、判決の概要をそう説明した。

寺井一弘弁護士は「言語同断。空疎な判決で大きな怒りを覚える」とし、
伊藤真弁護士は「裁判所が憲法秩序を守る役割を放棄した。しかし、合憲だと判断することができなかったことは重要」と指摘した。

原告の一人・渡辺一枝さんは
「私はハルピンで生まれ、引き揚げてきた。憲法9条がどれだけ大事なのかわかる。
それを蔑ろにする判決。悔しくてならない」などと述べた。

弁護団は同日、〈今回の判決は、司法の使命の否定であると同時に、
憲法の理念を根底から否定し、戦争へと舵を切ろうとする国策による憲法の破壊・蹂躙に、
司法が積極的に手を貸すもの〉などとする声明を出した。

同訴訟では証人申請を認めなかったが、
前橋地裁や横浜地裁などでは証人尋問が行なわれ、
宮崎礼壹・元内閣法制局長官が「明白な違憲立法」などと証言した。
来年はその前橋、横浜などで相次いで判決が出る。

政権の顔色を窺い、違憲かどうかの判断を避け、合憲とも言えない判決を出す裁判官ばかりではないだろう。
安保法制の違憲性だけでなく、司法もまた厳しく問われている。

(片岡伸行・記者、2019年11月15日号)