A(19歳)は、母方の祖父から贈与された土地甲を所有しており、その旨の登記も備えていた。
 Aの母Bはすでに死亡しており、Aの親権者は父Cのみである。
 平成29年1月17日、CはAの承諾を得ることなく、Dとの間で土地甲を時価相当額の3,000万円で売却する契約を締結した。この契約において、代金の支払いならびに登記の移転は同年3月1日に行うこととされていた。なお、Cがこの契約を締結したのは、C自身のギャンブルが原因で負うこととなった3,000万円の借金を返済するためであった。Dは契約締結時にはこうしたCの動機を知っており、甲土地がCの未成年子であるAの所有であることも知っていた。
 Aはこの売買契約の存在を知らないままに、平成29年2月20日に何者かによって殺害された。Aはこの時点で婚姻しておらず、姉E(24歳)と兄F(21歳)がいた。警察が捜査した結果、Aを殺害したのはCであることが判明し、同月28日にはCが逮捕された。そして、平成30年4月28日にはCの実刑が確定した。なお、Cには婚外のG女との間に子H(20歳)がおり、認知もしていた。
 平成30年8月6日、Dが代金を支払うから土地甲の登記を移転してほしいと言ってきたので、F・G・Hはそれに応じることとした。ところがEはCD間で締結された売買契約の無効を主張して登記の移転を拒んでいる。
 Dの登記移転請求は認められるか。Eの主張に根拠があるかを明らかにしつつ答えなさい。