Aは、母方の祖父から贈与された土地甲を所有しており、その旨の登記も備えていた。
 Aの母Bはすでに死亡しており、Aの親権者は父Cのみである。
 令和2年1月17日、CはA(この時点で17歳)の法定代理人として、Aの承諾を得ることなく、Dとの間で土地甲を時価相当額の3,000万円で売却する契約を締結した。この契約において、代金の支払いならびに登記の移転は同年3月1日に行うこととされていた。なお、Cがこの契約を締結したのは、C自身のギャンブルが原因でCが負うこととなった3,000万円の借金を返済するためであった。Dは契約締結時にはこうしたCの動機を知っていた。
 令和2年7月10日、AはCの承諾を得てE(21歳)と婚姻した。ところが、同年12月20日、Aは交通事故に遭って死亡した。Aは死亡するまで、土地甲がCによって売却された事実を知らなかった。Aが死亡した時点でEはAの子を妊娠していたが、令和3年2月11日に流産した。
 令和3年8月6日、Dが代金を支払うから土地甲の登記を移転してほしいと言ってきたので、Eはそれに応じることとした。ところがCは売買契約の無効を主張して登記の移転を拒んでいる。
 Dの登記移転請求は認められるか。Cの主張に根拠があるかを明らかにしつつ答えなさい。