「ダイヤモンドの価値がわからない人にはダイヤモンドはただの石である・・」
これは、中国の思想家である毛蔽招の名言ではあるが、まさにこの古本屋の親父のことである・・

なんにせよこの俺は、長年の“念願”であったこの競馬本を、ふとした成り行きから手に入れることが出来た
もう自分が生きてる間には手に入れることが出来ないであろうと諦めていたこの本を・・

もちろん、その地方都市から東京に向かうまでの列車内における数時間の間、俺はこの人生最上級の宝物を
さっそく袋から取り出して両手に取り、あらゆる方面から本をガン見、眺めつくしてして一人でニヤニヤと微笑んでいた
改めてこの本が自分のものであるということを確認して悦に浸っていたのだ
あるいは、自分では気がつかないうちに口元から涎が垂れていたかもしれない

その時の俺の様子は、傍から見るとまるで偏執教的なアブない人に見えたかもしれない
通報されても文句は言えなかったかもしれない・・・