この時点で異様なパワハラが伝わる




――競馬学校時代の大塚騎手のどのようなところに、気持ちの面での物足りなさが見受けられたのですか?

木村師 周りの目が気になって、結局恥ずかしがるんですよ。周りに何と言われようと、どんな目で見られてもやらなきゃいけない、パフォーマンスをしなければいけないことがあると思うのですが、その域に入っていこうとしないんです。だから大仲(厩舎の休憩所)で大声を出す練習をさせました。はいっていう返事を大声で言えないんです。

――自分の殻をなかなか破れなかったのでしょうか?

木村師 そう思いますよ。僕が怒るようにけしかけても、怒らないですしね。多分それまで彼が生きてきた中で、そのようなシチュエーションに遭遇していないから、大声を出したり、怒ったりする必要性がなかったんだと思います。それはしょうがないですよね。でもこれから先はそうしてもらわなければ困りますから。そうしてもらわざるを得ない手段として、けしかけたのですけど、当時はできなかったですね。

――その時、大塚騎手はどのような心境でしたか?

大塚騎手 自分に騎手になりたいという気持ちがあったので、自分のためにもなりましたし、周りが応援してくれていたのでひたすらやり続けるしかない、やってみるしかないという気持ちでいました。あの当時は、やはり自分の殻を破れていなかったということだと思います。