しかし、イチローの野球人生には続きがある。3月の復帰会見で「今、マリナーズが必要としていること、僕がそこに力になれるのであれば何でもやりたい」と語った球団への恩返し。マ軍との生涯契約だ。
関係者によると、メジャーでも極めて異例の契約内容。現役は「最低でも50歳」と話す通り、来季以降にチームの一員として故障者が出た場合などに選手としてプレーする可能性があるという。一方、この契約により日本球界に戻る可能性はなくなった。

古巣復帰が正式に決まったのは3月7日。右ふくらはぎの張りにも見舞われながら、5年ぶりの開幕スタメン出場を果たした。一方で、2日現在で15試合に出場して打率・205、0本塁打、0打点と数字は残せず。
しかし、豊富な経験やムードメーカー的な言動で若いチームメートらを支え、ここまで17勝12敗とチームの好スタートに貢献。
かつての球団の象徴、将来の米国野球殿堂入りが確実な功労者という意味もあわせ、生涯マ軍で働いてほしいという声が球団内で強まっていた。

マ軍はイチローがデビューした01年を最後に16シーズン、プレーオフから遠ざかっている。これは米4大プロスポーツ界で現在、最も長く続く低迷だ。
3月の入団記者会見。イチローは「それまで当たり前のようにあったものが全くそうでない、特別なものだった」と感慨深げに話した。
日米通算4367安打、メジャー通算3089安打をはじめ、あまたの偉業を残したレジェンドが、最も愛着のあるチームを再建するためにひと肌脱ぐ。