もし5年前、高校からすぐにアメリカへ渡っていたら大谷はどう育っていたのか。
「メジャーの育成プログラムでは、体ができていないうちにメジャーで投げさせるようなことはしません。段階を経て体づくりをしながら、イニング数、球数をしっかり管理して、マイナーで実戦経験を積ませます

日本とアメリカでは、育成に対する考え方がまったく違う。メジャーの下に3Aがあり、2A、1A、ルーキーリーグと5つのクラスがあるアメリカでは、実力よりも年齢で選手を振り分ける。
どれほどすごいボールを投げていても、メジャーで戦力になるとわかっていても、体ができていないうちから投げさせるわけにはいかないという考え方が徹底されているからだ。

メジャーのシステムを幼稚園、小学校、中学校、高校、プロと5つのクラスになぞらえるならば、幼稚園児がプロに飛ぶことはあり得ない。ただ、中学生が高校を飛び越してプロになる飛び級は用意されている。それがメジャーの育成プログラムである。
「もし高校からそのままアメリカへ行っていたら、25歳で10年総額300億円の契約を結ぶことができただろうし、サイ・ヤング賞を何度も獲るようなピッチャーになれたと思っています」
もし大谷がドジャースを選んでいれば、ピッチャーとして育てられていた。

高校時代の大谷翔平をピッチャーとして高く評価していた小島圭市(ドジャースのスカウト)は、大谷のバッターとしての才能をどう見ていたのだろう。
「バッターとしては、ドジャースのアンドレ・イーシアーくらいにはなれる器かなと思ってました……
あれっ、なんだか物足りなそうな顔してますけど(苦笑)、
イーシアーってメジャーで2割8分、ホームランも20本打てるバッターですからね。
ただタイトルを獲るレベルまではイメージできなかったというのが正直なところです」

大谷くんはまだインコースを打つ技術が低い。インコースをファウルにしない技術がなければ、メジャーで超一流にはなれないんです。
ミゲル・カブレラ、マイク・トラウト、ブライス・ハーパー、A・ロッド……彼らにはその技術が備わっています。
ケン・グリフィー・ジュニアのように、絶対にホームランを打てるポイントが3つも4つもあれば別ですけど、まだそこまではいってない。