そうなのだ。みんな呆れ笑いで平静を装ってはいるが半勃ちなのだ。先の方からミスリード汁が垂れている者もいる。
女っ気のないこの合宿。コーチじゃないが疲れマラだとしてもなんら不自然じゃない。ただ…
ヤツらの目には明らかに同情とは違う何かが燻っていた。
———体育会系。それは得てして雄々しく、それでいて朗らかな…まさに物語の主人公とでも外部の人間は思っている事だろう。
俺はそれを否定しない。ただ動物的な側面にばかりフォーカスを当てる人生を送ってきた彼らは時に信じられないくらいの嗜虐性を発揮する事もまた確かだ。
———サディスト。いや、そんな横文字は似つかわしくない。それはさながら猛禽類の性(さが)そのものなのだ。
「おい!そこのお前!何喋ってんだ!!」
コーチのターゲットが隣同士で談笑していた他の1年に移る。
『……助かった。』
俺はシュウに立ち上がるように促す。シュウも黙って頷く。お互いヤバい所に来ちゃったねと自分たちの人生を笑い飛ばすかのように気丈に振る舞った……。
……それがいけなかった。…その楽観が甘かった。そのせいでこれがシュウを見た最後の夏になるなんて……その時は想像だにしなかった。