その後も、衣装、映像、演奏、歌、ダンスなどが一体となった舞台が展開された。
純白のワンピース姿で披露された「守ってあげたい」(12thアルバム『昨晩お会いしましょう』収録曲/1981年)、「Hello,my friend」(26thアルバム『THE DANCING SUN』収録曲/1994年)では、
ユーミンが円型ステージの周囲を歩き、観客とコミュニケーションを取りながら歌唱。
豪華絢爛にしてファンタジックな着物をまとった「春よ、来い」(26thアルバム『THE DANCING SUN』収録曲)ではアリーナにドラゴンが登場し、日本の叙情性とアジア的な雰囲気を融合させる。
すべての要素をシームレスにつなげながら、楽曲のテーマと世界観を増幅させるステージには、壮大なスケール感と緻密な構築美がきわめて高いレベルで実現されていた。
どの席からもステージの全体像と細かい演出が確認できる設営、回転するステージを活かしたパフォーマンスも印象的。
また、武部聡志(Key)を中心にした凄腕ミュージシャンによる演奏も素晴らしい。
AOR、ロック、ダンスミュージック、フォークロアなどの幅広いテイストを取り入れた色彩豊かなサウンドをたっぷり味わえたことも、このツアーの醍醐味だったと思う。

 「ハートブレイク」(15thアルバム『VOYAGER』収録曲/1983年)は今回のツアーの大きな見どころの一つ。
80年代バブル期を想起させるオーバーサイズのライダースジャケットは、1982年の『パールピアス』ツアーの衣装(当時の衣装はファッションクリエイターの伊藤佐智子氏によるデザイン)のオマージュ。
84年リリースの映像作品『コンパートメント TRAIN OF THOUGHT』に収録された「ハートブレイク」のMVの振り付けも再現され、80年代を謳歌したであろうオーディエンスたちも楽しそうに身体を揺らす。
それにしても、原色バリバリのジャケット、ロングのソバージュ姿、ピンヒールでキメたユーミン、めちゃくちゃカッコいい。
こんな大人の遊びを粋に演出できるアーティストは、彼女以外にはいないだろう。

 宇宙空間を思い起こさせるコスチューム、映像、ダンスを取り入れた「不思議な体験」(15thアルバム『VOYAGER』収録曲)から、ライブはクライマックスへ。
「Nobody Else」(20thアルバム『Delight Slight Light KISS』収録曲/1988年)では、2003年の『YUMING SPECTACLE SHANGRILA U』の
エアリアルティシュー(天井から吊るされた布を使用し空中パフォーマンス)が披露され、バンジーを取り入れたダイナミックな演技が繰り広げられる。
息を飲むような緊張感と圧倒的な美しさが共存したパフォーマンスに対し、会場からは大きな拍手と歓声が送られた。