ここで改めて強調しておきたいのは、“すべての中心にあるのはユーミン自身が生み出した音楽である”という当たり前の事実だ。
自身の体験、内省的な風景を描くだけではなく、題材やモチーフを外部に求め、各国の都市やリゾート、アジアやアフリカ、果ては宇宙や時間を超越した空間をにまで広がったユーミンの楽曲。
3rdアルバム『COBALT HOUR』(1975年)を境にして、(それまでの日本に存在しなかった)エンターテインメント性に富んだステージを目指し始めた彼女だが、その根本にあるのはおそらく“楽曲の世界観を正確に表現したい”というモチベーションだったのだと思う。
今回の『TIME MACHINE』ツアーでは45年のキャリアを総括するような演出が施されていたが、“すべては音楽を表現するため”という姿勢はまったくブレていなかった。
この一貫したスタンスもまた、ユーミンが長年に渡って支持されている理由なのだろう。

 ラストはスリーピースのスーツ姿で力強く披露された「ESPER」(14thアルバム『REINCARNATION』収録曲/1983年)、
「COBALT HOUR」(3rdアルバム『COBALT HOUR』収録曲)、そして最新アルバム『宇宙図書館』(2016年)の表題曲「宇宙図書館」。
〈いつの日にか また逢えたら 微笑むように〉というフレーズが大きく広がるなか、ライブ本編は終了した。

 アンコールでも、華やかで洗練された演出と豊かな音楽性がたっぷりと堪能できるステージが続いた。
「カンナ8号線」(12thアルバム『昨晩お会いしましょう』収録曲)ではマリンルックのユーミンを中心に、ダンサーがフラッグを使ったパフォーマンスを披露。
さらに代表曲の一つである「DESTINY」(8thアルバム『悲しいほどお天気』収録曲/1979年)では、観客が揃いの振り付けで盛り上がり、〈今日わかった また会う日が〉というフレーズでは大合唱が巻き起こる。
最後は「ひこうき雲」(1stアルバム『ひこうき雲』)。
ピアノと歌だけのシンプルなアレンジにより、すべての言葉、すべてのフレーズが、観客ひとりひとりの心に真っすぐに浸透していく。
ユーミンの歌の力を実感できる“演出”によって、会場全体が大きな感動で包まれた。