353 :俺より強い名無しに会いにいく [sage] :2018/01/02(火) 16:29:25.66 0
会場へ続く長い階段を下から上がってくる男がいる
梅原は顔を背け、目を合わせられずにいた
目の前にいるのは人ならざる者
男の体からは言うなれば獣臭が漂っている
ただでさえ臭い肛門を、もう何日も洗っていないかのような強い臭いがする
それはその男が人として当然の習慣を忘れるほど超修行に打ち込んだことを示していた

極まっている――梅原は確信した
目の前の男はこの舞台に相応しい、まさに獣
オオヌキではなく、ボスの言うところのヌキ
自分とZERO3で火花を散らした頃の、不遜を許されるだけの才
いやその頃を取り戻してさらに修行を重ねた、未だ誰も見たことのない”獣”
そう認識した

梅原は獣の仕上がりに安心し
また気を抜けば喰われそうな無言の圧力に畏怖し
その場を何事もないかのように通り過ぎようとしていた
男は下へ、獣は上へ
二つの点が交差し遠ざかろうとする。するとその獣が

「いいんだな?」

と背中合わせに問いかけてくる
梅原はしばし逡巡し、「…いやー、な、何が?w」とピリついた空気を誤魔化すしかない
獣の言葉は止まらなかった

「本気でセックスしていいんだな?」

コイツは何を言っているのか
梅原は可能な限り頭を高速回転させて最適解を探す
この場で言うセックスとは何か?
何かの比喩的表現か?
確かにこれほど極まった状態の人間なら、格ゲーの試合をセックスと表現することもあるかもしれない
現に去年行われた大貫vs力丸の春麗対決が、公開セックスなどと呼ばれていることを梅原は知っている
ならば今の大貫の発言は――本気で弟子犬を殺しに行っていいのか?ガン処理して場が冷えても構わないか?――概ねそのような意味だろう
梅原はその結論を経て、喉から声を振り絞るように答えた

「…ああ、存分にセックスしてくれ。みんなそいつを楽しみに来たんだ」

返事はない。獣が再び歩き出し、階段を叩く足音が聞こえ始める
すなわちそれが了承したという返事代わりであった
獣が去りその場の緊迫感が薄れると、そこで梅原はようやく安堵のため息を漏らす
それと同時に体の底から打ち震えてくるものがある
コイツは凄いぞ
これはきっと最高の試合になる
最高のイベントになる
イベンターとしての道も開拓しつつある自分にとって、新年一発目最高の滑り出しだと梅原は思った