【大昔の発展場摘発】 
ある日、砂川屋に刑事が訪れ「このような状態をこのまま続けていると営業停止にする」と言ってきた。 
これがきっかけとなったのか「砂川屋」はしばらくの間休館することになった。その間、客達は、ライバル店であった「一条旅館」に流れたようだ。 
夏の暑い土曜日でした。私が行ったのは午後九時頃でしたでしょうか、あの一条旅館へ入る小路に行きますと、何か目つきの鋭い男達が、二、三人ずつ屯しているのです。 
夜0時半頃でしたでしょうか、突然玄関の方でドヤドヤという音がしたかと思うと「警察だ、全員そのまま動かない!」という声です。 
私は瞬間、「あっ取り締まりだ」と思い二階から物干し台につながる細い階段を飛び上がって屋根に出て、となりの家の屋根づたいに裏の道路へ出、 
停めてあったトラックの荷台の中で震えながら隠れていました。 
玄関前の小道には装甲車が三台並べられ、そのうちの一台には投光器が据えつけられて玄関に向けてライトが照らされていました。あとで聞いたのですが、中にいた人は 
一人ずつその光の中を(ほとんど皆裸同然でした)連れ出されていったのだそうです。 
この時、連行されたのは64人で調書を取られ始末書を書かせられた。 
素直に取り調べに応じればひと晩で帰されたそうだが、否認し続けた人は1週間も拘留されたという。 
その調書は「『AはBにオカマを貸し、さらにCの◯◯をくわえ、その両手でDとEの◯◯を握り…云々』とまるでポルノ小説だった」そうだ。 
それにしても64人というのは多い!「一条旅館」の繁盛ぶりがうかがえる。 
刑事達は事前に客として館内に潜入していたという。「あとで皆気づいたのですが、そういえば皆裸同然か浴衣一枚でいるのに、 
その二人は浴衣姿なのに靴下をはいていたので不審に思った」と書かれているのが、なんともリアルである。 
また、後日談として、こんな、ちょっといい話も紹介されている。 
無事?逃れたのは四、五人だったそうです。その中には、個室をとっていたお爺さんもいました。 
その人が二時間もくどき続けた中年の男が、実は刑事で、あんまり必死に口説いたので情が移ったのか、乱交に加わっていなかったからなのか、 
警察の手入れの直前警察手帳を出して、「私は刑事だ、これから取り締まりが行われるが、あんたは見逃してやるから部屋にじっとしていなさい」といわれ、がたがた震えながら部屋の中にいた、という笑うに笑えない話もありました。