『いま世界の哲学者が考えていること』はいろいろツッコミどころは多いが、現在思想系の読み物としてはそれなりに面白く読める。現代思想系の残党がきゃっきゃ騒いでるものとしては既に思弁的実在論があってちょこっと調べたことがあるが、どうしても昔の東浩紀が言うところの否定神学システムにしか見えないし、であるがゆえに不毛としか思えない。それに比べれば、同じ実在論と呼ばれていてもマルクス・ガブリエルの新実在論のほうが興味深そうに思えた。そもそも、マルクス・ガブリエルは思弁的実在論を批判しているので同じく実在論と称しているからと一緒にしてしまうのはどうかと思う。というわけでマルクス・ガブリエルについて調べたのだが、結論としては哲学史家としては天才的かもしれないが哲学者としては物足りないと感じた。
マルクス・ガブリエルはもともとは後期シェリングの研究で有名だったのが、一般向けに書いた哲学書である「なぜ世界は存在しないのか」がベストセラーになって一躍有名になり、日本でも注目されつつある。しかし調べてみると確かにドイツではベストセラーになったかもしれないが英語圏ではそれほど話題になっていないように感じる。マルクス・ガブリエルは分析哲学にも目配せしているだけにこれは注視すべき事実だ。これまた結論を先に行ってしまうと、マルクス・ガブリエルは分析哲学をもう少しきちんと勉強したほうがいいんじゃないかと思う程度には議論が甘いと感じた。