その後人間は鉈や靴に付着した血を洗い流すと放牧されているニク達に向かい大声で叫んだ。

「交代!」

その声にニク達は次々と畜舎へ戻っていく姿はいずれも不満な表情すら浮かべず、にこやかに戻っていった。

同じ頃、廃屋に残された♀も我が子の骨を抱きながら息を引き取った。

このつがいは一例に過ぎず今も野生のタブンネ達はその誇りを胸に今日もどこかで滅びの宿命に抗っているのだろう。
学者の調べでは現在の古種対策が続けば絶滅は確実だという。

………………
最後に肉として命を終える以外の種ニク、母ニク、産卵ニクはどうなるかを解説して終わりにしたい。
彼らは三年目を迎えると薬により最期を迎える。
品質を保つためには三年しか有効に働けないのはやはり人間の手が入ったからであろう。
ただし種ニクのみは一歳で必要分の精子が確保された時点で精肉となる。


遺体はミキサーにより液状化された様々な分野で活躍する万能燃料となる。
改良されていない野生のタブンネでは燃料にはならず、先ほどの♂のような野生の遺体は高熱焼却され灰すら残らない。
焼却炉のバーナーの燃料ももちろんニク油。


これらが21XX年のタブンネの現状。
長い時を経てようやく願ってやまなかった人との共存の道を得たのだ。
タブンネであることを捨て去っても、彼らにとっては他者から必要とされることが一番の幸福なのであろうから

終わり