高3の夏休みには、アニメの現場を知りたいと言って手あたり次第にスタジオに問い合わせ
動画のバイトとして放映作品に参加してしまった。
漫画の神様もアニメ制作では神業が通じなかったのか、深刻な人手不足で誰でも欲しい修羅場に
自分から飛び込んでしまったのだ。
確かその作品は「プライムローズ」と言った。

まるで武者修行のような夏休みが終わると、彼はこう嘆いた。
「光源があると考えられる面に影指定されてるんですよ」
「人工衛星の回転を描くんだけど、影指定のラインも一緒に回ってあっち行っちゃうんです」

当時はイデオンの映画も公開されたばかりで、僕はパースパース!アオリアオリ!ライティング!ととち狂ってた。
村田君に大友克洋先生の既刊本全部を押しつけて、とにかく読めと言ったのも僕だ。
もともと才能を持っていた彼は、湖川師匠や大友先生の作画メソッドをすんなり吸収してしまった。
プロの現場でおかしいとも思われず、日程に押されて見過ごされていた間違いを高校生の段階で気づき修正してたのだ。