そして冬休み。
就職組は11月からこの期間に行き先を決めるが、彼はアニメーター志望のみに賭けた。
折り悪く、彼が入社を望んでいた東京ムービーとテレコムは、この年の新卒採用をやめていた。
それでも村田君は、学校の就職指導担当や美術教師を介して連絡をつけてもらい
超ベテランの大塚康生先生の面接を受けることができた。

(ここで少し脇道の話だが、彼は父親の職業を僕らに絶対教えてくれなかった。
モデルガンマニアだったのをからかって「親父さんはヤの付く仕事だろ」とみんな口では言ったが、
東京ムービーの大塚先生に会えたり、2年後には2馬力に入れたのだから、実はお父上が
村田耕一さんでは? なんて思ったりもした。
村田君の高校生離れした才能を見れば、そうも思いたくなるのだ)