「放せよ、もう一発くらいたいのか!」
「ミーッ!ミーッ!!」
俺とタブンネは両手で卵を引っ張り合う。タブンネはあきらめる気配がなさそうだ。

こうなったら動けなくなるまで叩きのめしてから奪うしかないと思い、俺は手を放した。
急に手を放され、勢いあまってタブンネは後ろにバッタリ倒れる。
ところがその時、グシャリという嫌な音がした。
卵を引っ張る力が強すぎて、タブンネは自ら卵を抱き潰してしまったのだ。

「ミッ!?………ミ……ミィィ……?」
恐る恐る自分の腹部を見たタブンネが見たのは、卵の破片とその中のベビンネの姿だった。
卵の殻ごと抱き潰され、体が破裂したベビンネは、もちろん血まみれで即死だ。
「ミ……ミヒィィィィィン!!」
産声を上げることすらなくあの世へ行ってしまった我が子の亡骸を抱き締め、タブンネは号泣し始めた。
「バカが、さっさと放していればこんな事にならなかったのに」
俺は吐き捨ててタブンネに背を向け、新たな卵を探してさらに森の奥へ向かった。

しかしいつもならもういくつかは巣と卵が見つかるものだが、今日はどうも見当たらない。
先程のタブンネの悲鳴を聞きつけ、他のタブンネは怯えて逃げたか姿を隠してしまったのかもしれない。
あきらめて引き返そうかと思った時、ちょっと開けた場所が見え、タブンネの親子の姿が目に入った。
父親らしいタブンネが子タブンネと遊んでおり、それを母親タブンネが笑顔で眺めている。
母親タブンネは卵を抱いていた。まあまあの代物だが、今日はあれで妥協するとしよう。

草むらを掻き分けて姿を現した俺に、タブンネ一家は警戒心を露にした。
母タブンネと子タブンネは、怯えた顔で父タブンネの後ろに姿を隠す。
「ミッ!」
父タブンネは両手を広げ、俺を通せんぼする。勇敢といえば勇敢、無謀といえば無謀だ。
卵をよこせ、などと言っても聞く耳を持たなさそうだ。だったら、いきなり実力行使するに限る。

俺はバットを父タブンネの脳天に振り下ろした。
「ミヒィーッ!!」
倒れる父タブンネの頭も背中も手足も、俺は見境なく殴打する。
「ミッ!ミギィ!ミヒィー!ビッ!ギィィィ!!」