私たちは、オリジナリティーと聞くと、ゼロから考え出すものだと思いがちですが、そうではありません。まずは、従来からあるものを組み合わせたり、さまざまなものを取り入れる段階があります。自分のオリジナリティーを出すのは、そこからどのように変えていくかにかかっているのです。

私が論文を書くときも、そういう発想をしています。一からモデルを組み立てていくことは少なくて、ある問題意識で論文を書きたいと思ったら、経済学におけるさまざまな分野の論文を読みあさるのです。書こうとしているテーマとは違う分野の論文もありますが、それでいいのです。そうすると、「この論文に書かれたモデルは自分が考えている問題意識に使えるかもしれない」、あるいは「このデータ分析の方法は使えるかもしれない」というように結びつくわけです。

すると、そのままでは使えなくても、自分の問題意識に合わせる形でその論文の骨組みやデータを持ってくることは可能です。

論文の形がある程度まとまってくると、今度は追加で分析するために、何か良いアイデアはないかと、またいろいろな論文を読みあさります。そうすると、「この話は少しくっつけると面白いかもしれない」ということが出てきて、論文の幅が広がっていく、というように進んでいきます。

もちろん、これは他人の表現を真似るという意味ではありません。そもそも、言葉というのは私たちが自由に発明するたぐいのものではなく、誰もが共通して認識できるものでなくてはなりません。印象的な表現や斬新なコピーもすべて、すでにあるものをどう組み合わせるかにつきるのです。