第一次東伐編
戦闘前
角王朝皇帝歴彦の勅令により反乱勢力の討伐に乗り出した謙介は、ついに難攻不落の東国侵攻を決意する。
かつて涼宮軍を率いた谷川流(こくせんりゅう)、幸運星軍を率いた美水(びすい)の二将もってしても撃破できなかった東国。
真正面からの進撃は不可能と考えた謙介は密かに調略を開始し、内部から崩壊させようと企んだ。
その上で兵法学者の知恵を借りようと平耕に取り行った。彼は毒舌ゆえに角王朝から用いられることはなく本人もその気は無かったため、酒を飲ませて機嫌を取ることにした。
前後不覚になるまで酔ったところで謙介は「東国を攻略したいがどうしたらよいでしょうか」と尋ね、平耕は「叢雲が月を食べる時が好機」と答える。
満月の夜、敵の見張りが月明かりで油断している日に敢えて夜襲をかけよというのだ。
こうして歴彦21年の5月の満月の夜、謙介率いる二万の兵は東国国境に侵入した。

国境の戦い
国境警備に当たっていたのは黄昏新天地軍、海原豚が率いる太田の直属部隊であった。「黄昏」の旗印を見た物見は恐れをなして撤退を進言したが、自ら視察した謙介は
まばらに置かれた兵の位置を見て「恐れるに足らず」と一笑に付した。
そして月が叢雲に隠れ闇夜となった瞬間、謙介は「暁の水平線に勝利を刻め!」と号令をかけて一斉に火矢を放った。
すっかり油断仕切っていた海原豚の軍勢は反撃もままならず、闇夜の中で同士討ちを始める有様であった。仕方なく海原豚は国境を放棄して戦線を立て直すことにした。
謙介の軍勢はすかさず追撃を開始した。