僕はベビンネ二匹の耳を削ぎ落とし両腕を切断した。死なないように止血すれば再生力で傷は塞がる。
流石に欠損した部分は再生しないが充分だ。

グロテスクな塊を抱えたママンネに卵が無事で孵った事を告げるとママンネの顔に希望の光が戻った。
息を切らして贅肉を揺らしながらベビンネの鳴き声が聞こえる場所に走るママンネ。
「チィ!チィ!チィ!チィ!チィ!チィ!」
「ミィ・・!ミッ?ミッミィィィ!」
可愛らしく元気一杯の鳴き声の主の姿を見てママンネは愕然とした。
耳と腕が無いからだ。
まだ目も開いてないベビンネ二匹は本能で母親を察知したのか、ママンネ目指し頼りない動きで這い出した。
「チィ!チィ!チィ!チィ!」
本来なら感動的な場面だが・・・。

「ミブェェ〜!」
ベビンネを気味悪がり嘔吐するママンネ。
這ってくる二匹の存在を認めたくないらしい。


せっかく、この世に生を受けたのに、産まれた直後に存在を否定されるなんて哀れなベビンネ達だ。


ママンネは耳と腕の無いベビンネ二匹から逃げようとしたが、狭い部屋の中だ。すぐ壁際に到達し逃げ場を失ってしまう。
そんなママンネに二匹が母親の温もりを求めてママンネに体を寄せた。

本来なら産まれた直後はママンネがベビンネを抱き締め体を舐めて綺麗にしてあげる。
まだ目の開かないベビンネはママンネの触覚に触れ母親の愛情を感じとり安心を覚えるものだ。

だがママンネは目の前の奇形児を認めず育児放棄してしまった。
ひたすら首を横に振り否定しても二匹は消える筈が無く、そこにしっかりと存在している。
「ミビャアア〜!」
いくら泣いても、どれだけ現実逃避しようとも、延々と「何故、こんな酷い目に合わないといけないの?」と被害者面しようとも、ママンネにあるのは絶望だけだ。
大切な形見も家族の絆も産まれてくる子供との対面も自慢の耳も全て僕に奪われた。
まあ元を正せばママンネの身勝手からこうなった訳だが。