いや、まだ残ってるものがあった。
タプタプのだらけきった腹だ。せっかく産んだ卵を潰してしまうタブンネ自慢の腹。良かったじゃないか。

悲痛な叫びを続けるママンネの触覚に触れたベビンネ二匹は不安な気持ちで一杯になってしまい泣き始めた。

僕はママンネに鏡を見せてあげた。
「ミッ?ミヒッ!ミッピャアアア!」
鏡に映る姿は親子揃って耳が無くまんまるな頭。
どうやらママンネは今更ながら自分の耳が無くなっている事に気付いたらしい。「ママンネ、君にそっくりじゃないか。何で嫌がるんだい?」
意地悪くわざと優しく語りかけるとママンネはベビンネ二匹を放り出し逃げ出した。
「チィ!チィ!チィ!チィ!」
後には母親を求めて必死に鳴く捨てられたベビンネ二匹が残った。


ママンネは家を飛び出し近くに停車していたトラックの荷台に勝手に乗り込んだ。
子供達を見捨てて自分だけ助かろうと企てている。
僕はトラックの運転手に怒られると思い焦ったが、実際少し話をするだけで怒られる事は無かった。

数日後、宅配便で毛布とミィミィフーズが届いた。
先日のトラックは食肉加工の業者のものだったのだ。僕はママンネを処理して出来たフーズと残った毛皮で作った毛布を手配して貰ったのだ。

まずフーズをキムチンネとオデンネに与えた。
二匹共に元気だが仲は険悪だ。
毎日交代で溺愛と虐待を繰り返している。
フーズを奪い合いながら食べる様は醜く知性のカケラすら感じさせない。

ベビンネ二匹にはママンネの毛布を与えた。
懐かしい匂いを感じたのかベビンネ達は毛布にくるまり、とても心地良さそうだ。
「チィ♪チッチィィィ〜♪」
毛布の中ではしゃぎ遊びだす二匹。
こんなに楽しそうな表情は初めて見る。
母親の温もりに包まれて幸せなんだろう。
あんな親でも、こいつらにとってはかけがえのない唯一の存在だったんだろうなぁ。

僕は同じくママンネ産のマフラーをベビンネ達の首に巻いた。
「チィ!チッキャア♪」
すっかり朝晩は寒くなったこの時期にマフラーは嬉しいだろう。
ベビンネ達は瞳を閉じてうっとりしたような表情を見せた。