「ミィ〜ミミィ〜♪ミィ〜ミミィ〜♪」
母親タブンネの子守唄が無邪気にじゃれあう子タブンネ達を優しく包み込む。
「ミッ!ミィ!ミミィ!」落ち着き無くはしゃぐ子タブンネ達も母親に抱き締められ、その暖かい温もりを感じながら夢の中に誘われていく。
「ミピュ〜。ミキュゥ〜。」

可愛らしい寝息をたてながら楽しい夢を見ているのか顔を綻ばせる子や寝ながら母親の乳房を求めて指をチュパチュパしゃぶる子達を母親タブンネは目を細めて優しく見つめている。


微笑ましい光景だ。
誰もがそう思うだろう。
こんな可愛い天使達を虐待するなどあり得ない。
…そう思っていた。

最近屋根裏からガタガタ物音がするようになり「ミィミィ」と甘ったるい鳴き声が聞こえてくるようになった。

僕は今木造の古いアパートに住んでいる。
古い故にある程度は想定していたが、まさか冒頭述べた光景がうちの屋根裏で展開していようとは。

先程は母親タブンネと称したが声が少し甲高い。恐らく子タブンネが幼いベビンネ達の世話をしているのだろう。
流石に大人のタブンネが忍び込める程の広さの屋根裏ではない。
親を失い野生の世界では生きていけず放浪の果てに辿り着いた安息地がうちの屋根裏だった訳か。

その証拠にタブンネ達の楽しそうなはしゃぎ声が毎日僕の耳まで届き毎日楽しく遊び回っているのが屋根裏からの振動で用意に想像がつく。
そう、毎日だ。
毎日、毎日「ミィミィミィミィミィミィミィミィ。」

屋根裏からの歌声や踊りは騒音となり僕のストレスを膨れ上がらせる元凶となった。

奴等は無駄に知能が高い為に冷蔵庫を漁る事を覚えたり躾などされていない為に部屋の至る場所に糞尿を撒き散らし床一面を泥のハートマークで染め上げる。
部屋は散らかり広範囲に散らばって落ちているピンクの抜け毛がタブンネ達が蹂躙していった事実を物語っていた。

当然僕の怒りは限界だった。しかし正確に奴等の棲みかを把握しておらずタブンネ達も僕を警戒しているのか、なかなか尻尾を掴めない。

そう、尻尾だ。
あのフワフワとした人を小馬鹿にしたようなふざけた形をした尻尾。

時々物陰からフリフリと動く尻尾がチラリと覗くがいつもあと一歩のところで逃げられてしまう。