「綺麗に掃除したら子供を返してやるよ。雑巾はこれを使いな。」
僕はそう言って尻尾をママンネに渡した。


「ミィ・・ミィィ!」
ママンネは首を横にブンブン振った後、僕のズボンをキュッと掴み僕を見上げながら媚びるようにミィミィ鳴き出した。

「・・・まあ大事な形見だしな。悪かったな。」
僕の言葉を聞いたママンネは安堵の表情を浮かべ形見の尻尾をギュッと抱き締めながら目を瞑っている。
「良かった。ずっと一緒だよ、お母さん。」とか思っているのだろうか。

形見の残り香を嗅ぎながらうっとりしているママンネの目の前にミキサーを置いた。 丁度ベビンネ一匹の体がすっぽり入る。
僕は先程バッグに閉じ込めた一匹をミキサーの中に入れる。


「ミチィ!ミッミィ!」
ベビンネがどれだけ足掻こうが脱出する事は不可能だ。
必死な姿とは裏腹に尻尾をフリフリさせ全く緊張感を感じさせないベビンネを見て僕は思わず吹き出してしまう。

そして開けっ放しのミキサーの上からベビンネ目掛けて用意しておいたポットのお湯を一滴かけた。
「ミピャア!」
もう一滴。
「ミヒィィ〜!」
熱湯がかかる度に目をカッと見開きピョンピョン跳ねるベビンネ。

青ざめるママンネにボソッと「尻尾で掃除すればこんな事にならなかったのにね。」と耳打ちすると、暫くして涙をボロボロ溢しながらママンネは形見の尻尾を使い糞尿を掃除し始めた。

一通り掃除が終わる頃には尻尾は変色し毛並みはボサボサになり悪臭で残り香どころではなくなった。
それでも大事な物なのか手放そうとしない。

いつまでも汚物まみれの形見を見つめるタブンネ達の姿にも見飽きたので形見にライターで火をつけた。
目の前で大事な物が燃えている。しかし熱くて近寄れず泣く事しか出来ないタブンネ達の絶望的な顔はなかなか見物だったので思わず写メに撮ってしまった。

その後、親との思い出に浸るタブンネ達を現実に引き戻す為にミキサーの中からベビンネを取りだしママンネに見せ付けた。
尻尾を掴まれ宙吊りのベビンネは恐怖と痛みから激しく暴れている。

僕はベビンネの足に鎖を巻き付け床にそっと置いた。自由になったベビンネはママンネの元に一直線に向かうが急に足が引っ張られ先に進む事が出来ない。