「ミッ!ミィヤァァ!」
オデンネを傷付けたキムチンネは僕のズボンの裾を掴み「何とかして!」と懇願してくる。
壊れたオデンネを自分ではどうする事も出来ず僕にすがるしかないのだろう。
「残念だけど僕にはどうする事も出来ないよ。」
万策尽きたキムチンネはその場に座り込みワナワナと震えた後、大声で泣き出した。後悔と自責の念、無力感あらゆる要素がキムチンネを追い詰める。
泣いてどうなる訳でもない。だがそれでもキムチンネは止めどなく溢れる涙を抑える事は出来なかった。
「ミビャアアアア〜!ミビャイィィィ!グギィィィ!」
悔しさも混じっていたのだろう。土下座のように頭を垂れたまま激しく歯軋りし両手を強く握り締めている。
オムツンネは先程と変わらず完全に現実逃避モードだ。
オムツは黄ばんで汚ならしい。

僕はオムツンネのオムツを取り替えてやった。歯をガチガチ鳴らしていたが、さほど暴れなかったので労せず取り替え完了。

その後オムツンネの前に飴玉を転がした。
始めは警戒して飴玉に軽く威嚇をしていたが鼻をクンクンひくつかせ匂いを嗅いだ後ペロペロと舐め始めた。

「フィ!フィフィ〜!」
飴玉の味を気に入ったようだ。一気に頬張り口の中でコロコロさせている。
甘い香りが口一杯に広がり遊ぶように舌で飴玉を転がしながら味わうオムツンネ。歯の無いオムツンネにはこれ以上ないご馳走だ。
ましてや朝食は苦い薬だったのだから天にも昇る心地だろう。
「フィ・・・!フィィ・・・!」
涙を流し喜ぶオムツンネ。飴玉と同じように床の上でゴロゴロ転がりながら味わっている。

一方キムチンネは突然ハッと何かを思い付いたように顔をあげてポテポテと歩き出した。
屋根裏に向かっている。
ママンネを頼るつもりだ。しかしママンネは昨夜からベビンネ達を放置し夜中勝手に外出し帰ってからも屋根裏にこもったままだ。
到底助けてくれるとは思えない。

キムチンネの後を追ってみると屋根裏からママンネの荒い息づかいが聞こえてきた。
「ミッ!ミッ!フーッ!ミッ!ミッ!フーッ!」
息づかいは次第に荒さを増しボリュームもあがり、やがて絶叫に近くなった。
「ミィアァァァ〜!」
今日一番の絶叫が響くとゴロン、ゴロンと何かが転がる音が数回して屋根裏は再び静寂を取り戻した。