浮浪雲 十四巻『迅の巻』より

「ほほほ 悪人と善人 ふた通りございましょう。」
「ほほ もうひとつございますよ 青田様」

「はあ? 善人に悪人・・・はて・・・?」

「小人でございますよ」

「小人・・・」

「はい、悪人は罰することができましょう」
「善人はほめたたえることができます」

「しかし小人はねえ」「なんかいやーな感じでございましょう」

尻きれとんぼの意見をまくしたてる人、

これもまた小人

こそこそせかせかして落着かずあきっぽく
そのくせ賢くとびまわり、
ひとたび失敗すればすぐにうなだれる。
こんなのにかぎって天下国家などとわめく

これもまた小人

いやしく多く食らい、
惰眠をむさぼり、
肉欲の海におぼれ、
いたずらに過労し自分を病ましめる

自分の過失を人や社会のせいにし、
言いのがれの思想を口にする

そしていよいよ追いつめられると
神妙になり神に伏して祈る

自分の魂を抜きにしての神だのみ

…これも小人。

自分より上の人を見ましてねえ、
自分もあのようになりたいとお思いになるんでしょうが、
そうなるための
努力や修行はなさらない…

だんだんその人を嫉妬するようになり、うらんだりする。
いたずらに嫉妬いたしまして、努力して自分を引き上げて
その人に近づこうというのではなく…
その人を自分のところまで引きずり降ろそうとします。