女性の発達障害の特性の一つに、忘れものや遅刻が多いといった傾向があるのですが、他の要因が関係して起きていることもあります。また、これらの行動を親が自分の責任だと思ってしまい、手助けをしてしまうんですね。そのために見つかりにくいということもあります」

ーー子どものためにフォローすることは親としては当然な気もしますが…。

「ほどよく、挫折とか、失敗を体験させることも大事だったりします。大学生まで、社会人になるまでと、親がフォローできても、その後は自分で何とかなるだろうとなってしまう。結果、親が助けて何とか成長して、あとは自己責任になってしまうんです」

社会には暗黙のルールがたくさんあるっていうことを、丁寧に説明してあげなければならないのですが、性に関する暗黙のルールや機微は親は伝えにくいし、友達から教わることもあまりないので、性被害に遭いやすいんですね」

ーー性に関する暗黙のルールって、どういうことでしょうか?

例えば夜道や、男性ばかりの飲み会って、暗黙的に“危険な場所だな”と認識できますよね。しかし発達障害の方は、仲の良い人たちだから行ってみようかなとなるんです。“危ない” “怖い”という感覚がないことがあります。

さらに例えば、2人でゲームしない?と誘われて男性の家に行くことも、ある意味、性的関係になる可能性もあるのに、社会的文脈や暗黙知が分かりにくいんです」

ーーいわゆる一般的な常識とは違う常識で動いてしまうんですね…。

「発達障害の方は周囲から『何でできないの?』『何で人の気持ちがわからないの』と否定され、怒られてきたケースが多いです。

このことは、最近、社会問題になっている「悪質ホスト問題」にもつながっているのではないかと思っています。否定され、怒られてきた人が、ホストに『キレイだね』『ステキだね』なんて褒められると、もう脳がとろけるくらい嬉しくなってしまうことがあるんですね。

世の中ではホストにハマる女性への自己責任論もあるようですが、精神科医目線だと、そうではないケースがあることもわかるので、この問題をどのように解決すべきかが今後の課題だと考えています」

ーー女性でコミュニケーションが苦手というのは、他にも影響がありますか?