財務省は19日、5月の貿易統計(速報)を発表した。それによれば、輸出金額(円ベース、以下同じ)は+14.9%で、6か月連続、輸入金額は+17.8%で、5か月連続の増加となった。輸出入どちらも好調であるが、輸入の伸びの方が強く、貿易収支は▲2034億円で、4か月ぶりの赤字となった。

国別の状況をみると、輸出先トップは中国で+23.9%、7か月連続の増加となった。僅差ではあるが、2年9か月ぶりにアメリカを上回っている。品目別に寄与度の大きなものから準に示すと、科学光学機器、半導体等製造装置、自動車部品である。

それぞれの伸び率は順に+37.4%、+54.3%、+23.9%。中国関連(日本株)の中では、スマホ部品、半導体製造装置などの機械、自動車部品あたりのセクターで業績が好調だと言えそうだ。

一部の労働集約型産業が中国から撤退する一方で、スマホ、テレビ、PC、家電製品など今後、IoT(モノのインターネット)分野で主役となりそうな潜在的に成長力の高い製品に関しては、依然として“モノ作り”は健在である。

特にスマホについては、アップルの組み立て生産基地が依然として中国であることに加え、この1、2年、華為、OPPO、VIVOなど中国本土系スマホメーカーの生産量が急拡大している。

また、自動車については、2016年における中国の生産台数は2812万台で世界第1位。第2位アメリカの2.3倍に達している。

小型自動車に対する購入税優遇措置が今年から、前年と比べて半減となったことで、生産の伸びが鈍化していたが、5月は少し持ち直し+4.1%となっている。中国は国家戦略として新エネルギー自動車の普及を全面的に推し進めている。

製品構成が今後数年で劇的に変化する可能性があり、電気自動車部品関連の日本メーカーには大きなチャンスがあるはずだ。

今年秋の共産党大会に向けて中国は景気刺激策を打ち出しているといった見方をするメディアもあるが、足元の中国経済は、金融当局が厳しく金融レバレッジの縮小を進めており、金利は上昇傾向にある。景気はどちらかといえば、ブレーキが踏まれている状態である。

銀行、保険、証券、不動産業界に対する監督管理が厳しくなっているので、資金が回りにくい。

本土株式市場は安定しているが、理財商品、不動産市場などの投機的行動に対する取り締まりは今後、1〜2か月の間、厳しい状態が続きそうだ。ただ、投機が沈静化すれば、PPP(官民一体)プロジェクトの拡大を推進力として、景気は持ち直すだろう。

長期的にはモバイルインターネット革命が新たな需要を切り開くだろう。5Gの登場、IoT革命の進展で、中国経済は長期的に安定成長を続けるとみている。中国関連(日本株)については、環境面では申し分ない。問題は、本土市場で競争力を保ち続けられるかどうかである。

日中間の貿易構造をみると、気になるのは輸出ではなく、輸入である。

輸出先トップは中国だが、全体の輸出に占める割合は19.1%に過ぎない。一方、輸入先トップも中国だが、全体の輸入に占める割合は23.6%もある。

寄与度の高い順に示すと電算機類(周辺機器を含む)、石炭、音響映像機器(部品を含む)で、伸び率は順に+21.6%、+438.2%、+18.6%である。かつて日本が強かった分野でも輸入が多い。

必ずしも、純然たる中国企業からの輸入とは限らないが、そのことは逆に日本の産業空洞化が深刻であることを示している。

電算機類、音響映像機器まで中国で生産していては、日本の雇用は守れない。低所得のサービス業でいくら求人が増えても、全体として日本国民が豊かになっているとは言えない。

日中間の貿易収支は、日本側の大幅赤字であり、赤字額は3118億円。全体の赤字額は2034億円なので、5割増しである。

米トランプ大統領と同じ発想をするのであれば、日本も、もう少し、人民元安への警戒感を持ったり、中国市場の閉鎖性に対する批判を展開したりすべきかもしれない。

日韓関係がこじれても、経済への影響は小さい。しかし、日中関係が同様にこじれると、輸入面、輸出面ともに中国への依存度が高いだけにリスクが大きい。日本は対中関係の重要性をしっかりと認識しておくべきであろう。

https://www.news-postseven.com/archives/20170620_565866.html