北朝鮮による弾道ミサイルの飛来を想定した住民避難訓練の取材で6月初旬、山形県酒田市を訪れた。前日朝も北朝鮮が弾道ミサイルを発射しており、市民からは「安心して暮らせない」と不安の声が聞かれた。

 今が最盛期のイカ漁への影響を知ろうと酒田港に寄った。小型船はシケで休漁中だが、日本のEEZ(排他的経済水域)内にある日本海中央部の浅い漁場「大和堆(やまとたい)」付近では中型イカ釣り船がフル操業中だという。

 驚いたのは、その付近は以前に弾道ミサイルが落下した場所に近いことだ。陸上ではミサイル被害はないかと奔走しているのだが、海上ではいたって冷静なように思えた。

 しかし、県漁連幹部の次の言葉に、日本海でのイカ漁に臨む漁師たちの覚悟を思い知らされた。

 「彼ら(北朝鮮)は、私たちがどこで操業しているのか人工衛星で把握しているのだと思う」

 北朝鮮の海上探知能力は定かではない。しかし、イカ釣り船団は夜間にこうこうと明かりを照らして操業しており、自分たちは常に北朝鮮に動きを捕捉されているような思いがする、というのだ。

 被弾の恐怖も感じながら続けるイカ漁だが、今は記録的な不漁。危険な海上で操業する漁師を思うとき、貴重なスルメイカに手を合わせてから食すことにしようと思った。(柏崎幸三)


http://www.sankei.com/region/news/170703/rgn1707030012-n1.html
2017.7.3 07:00