「韓国の金大中、盧武鉉両政権の支援がなければ、北朝鮮の体制は延命できず、今に続く核・ミサイル開発はなかった」。複数の日韓の専門家の見方だ。

 その金、盧両政権の対北融和政策である「太陽政策」の継承を掲げ、究極的には北朝鮮との「経済統一」を目指すのが、現文在寅政権だ。

 文大統領は、公約に掲げた「朝鮮半島非核化平和構想」で、南北が経済統合されれば、「8千万人の市場が形成され、経済の潜在成長率を1%引き上げられる」と強調。

 「毎年約5万件の雇用が創出され、若者の雇用問題も解決できる」とし、「世界経済地図を変える『朝鮮半島の奇跡』を生み出す」と訴える。

 そのモデルが金、盧両政権の太陽政策だ。金政権時代の1998年から10年間続いた金剛山観光事業で、事業の権利費だけで韓国の財閥から約4億8千万ドル(約540億円)が北政権に渡ったとされる。

 盧政権時代の2004年から操業が始まった開城工業団地事業では、北朝鮮労働者への賃金名目に16年の事業中断までに約5億6千万ドルが支払われた。

 中断当時の統一相が「この70%が朝鮮労働党の外貨獲得機関である39号室などに上納され、核・ミサイル開発などに使われた」との懸念を示した。

 文政権は、構想の入り口として、平昌五輪への北朝鮮選手団の参加を推進、民間団体の対北接触も次々承認している。その一方、文氏のブレーンらは政権発足前、北朝鮮の“ドル箱”といえる開城工団と金剛山観光の再開を提唱してきた。

 両事業が再開されれば、年約2億ドルが金正恩政権の懐に入ると見込まれる。核・ミサイルへの資金の流用は国連の制裁決議に抵触する恐れがあり、実際に再開すれば、国際社会の制裁の実効性がさらに失われる。(ソウル 桜井紀雄)

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北朝鮮の開城工業団地(聯合=共同)