【朝鮮学校無償化】教育の機会均等にかなう

国が朝鮮学校を高校無償化の対象外としたのは違法として、大阪朝鮮学園が処分の取り消しと適用の義務付けを求めた訴訟の判決が大阪地裁であり、原告側が全面勝訴した。

国は北朝鮮や在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)との関係を挙げ、生徒への就学支援金が授業料に充てられない懸念があると主張していた。しかし政治的、外交的思惑を教育に持ち込むのは望ましくない。

今回の判決は教育基本法で定めた「教育の機会均等」を重視した、まっとうな判断と言える。

高校無償化制度は旧民主党政権が2010年に導入。公立高で授業料を徴収せず、私立高生らには就学支援金を支給する。当初は朝鮮学校も審査の対象だったが同年11月、北朝鮮による韓国砲撃で手続きが中断。政権交代で第2次安倍内閣となった後の13年に対象外とされた。

理由について、当時の下村博文・文部科学相は「拉致問題が進展しておらず、国民の理解が得られない」などとした。確かに早期解決を求める日本の訴えに真摯(しんし)に向き合わない北朝鮮は、非難されてしかるべきだ。それでも在日朝鮮人の子どもたちに拉致問題の責任はない。拉致問題を絡めて無償化の是非を判断したのは妥当とは言えない。

日本が批准している国連の人種差別撤廃条約も、教育に関する権利を平等に保障するよう求めている。朝鮮学校の無償化除外はこの趣旨に反するとして、国連の委員会が懸念を表明した経緯もある。

日本が北朝鮮の非道を訴えるに当たっても、人種差別撤廃条約など国際社会が認めたルールにのっとった教育を実践していればこそ、理解や共感は一層得られるはずだ。

同種の訴訟は複数起こされている。大阪地裁に先立つ広島地裁の判決は国の主張を追認。「対象外とした国の判断に裁量範囲の逸脱、乱用はない」として、原告側の全面敗訴という正反対の結果だった。

だが、仮に国が言うように「無償化の資金が授業料に充てられない懸念」があるのだとしたら、その都度調査し是正すればいい。

実際に大阪地裁は大阪朝鮮学園について、私立学校法に基づき財産目録、財務諸表などを作り、理事会も開いている▽学園が運営する大阪朝鮮高級学校も、法令違反による行政処分を受けたことがない―と指摘。無償化の除外は違法で無効と結論付けている。

朝鮮学校という理由で、一律に除外する根拠は薄いのではないか。国は大阪地裁の判決を踏まえ、無償化制度の在り方を見直すべきだ。

拉致問題や核開発、最近の相次ぐミサイル発射を受けて、北朝鮮に対する国民感情はさらに厳しくなっていよう。だからといって、それらと直接関係のない子どもたちの教育の機会均等が、制限されるようなことはあってはならない。

判決は今後、東京、名古屋地裁や福岡地裁支部でも言い渡される。平等と寛容の精神が試されている。 

ソース:高知新聞 2017.07.31 08:00
http://www.kochinews.co.jp/article/115501/