朝鮮半島情勢が緊迫する中、中国が7月30日に挙行した大規模軍事パレードが改めて関心を集めている。実戦に近い形式で行われた異例のパレードでは、最新の大陸間弾道ミサイル(ICBM)のほかにも、陸軍特殊部隊やNBC(核・生物・化学兵器)防護部隊が披露された。

 中朝国境付近では中国人民解放軍の増強も伝えられており、最悪の影響が自国に及ばないよう手を打っているもようだ。

 軍事パレードの冒頭を飾ったのはヘリコプター部隊だった。習近平国家主席ら軍首脳らが見守る中、武装ヘリ36機が飛来し、着陸するや数百人の兵士が銃を構えながら展開、敵陣に迫るという実戦さながらの演習が繰り広げられた。

 パレード初参加という陸軍の空中突撃部隊で、指揮官は中国メディアに「迅速な機動力と正確な攻撃力を兼ね備え、これからの戦争で重要な使命を担っている」と強調した。

 パレードでは、陸軍特殊部隊も登場。全地形対応可能な車両32台に乗った、顔に迷彩を施した兵士たちが習氏の前を通過していった。同部隊は2002年に創設された後、今年4月に改編を終えたばかりだ。

 国防省報道官はこの日のパレードについて「周辺情勢とは関係がない」とコメントしているが、朝鮮半島専門の軍事関係者は「最新のICBM・東風31AGが初公開されており、米国を意識したパレードとみていい。ただ、それだけではない」として、北朝鮮対応も念頭に置いているとみる。

 中国は、米国が制裁を通じた問題解決を断念し北朝鮮を限定攻撃した場合、(1)中朝国境から遠くない寧辺(ニョンビョン)などにある北朝鮮の核関連施設で事故が起きる(2)大量の難民が国境に押し寄せる−事態を懸念している。

 米紙ウォールストリート・ジャーナルは7月下旬、「中国が国境付近で軍を改編・増強し、核・化学兵器の攻撃に備えて地下壕を整備している」「最近、北朝鮮へ派遣される可能性がある特殊部隊などの訓練や、武装ヘリによる実弾演習が行われた」と報道した。

 さらに「米国が北朝鮮を攻撃すれば、中国は軍事介入しなければならなくなるだろう」とする軍事専門家の見方を紹介し、北朝鮮北部を占領した中国人民解放軍が、(1)核施設を管理下に置く(2)中国へ北朝鮮難民が押し寄せるのを防ぐため安全地帯を設ける−可能性を指摘している。

 ただ、朝鮮半島の混乱を恐れて強力な制裁発動を見送っている習氏にとって、米軍の対北攻撃と中国の軍事介入は最悪のシナリオ。制裁発動を受け入れるにしても、秋の中国共産党大会が終わり自らの権力基盤が固まるまで、時間稼ぎをする必要に迫られている。



 「あれは中距離弾道ミサイルだ」。北朝鮮による7月28日のICBM発射をめぐり、ロシア国防省はこう一方的に発表し、反発を強める米国を牽制(けんせい)し、北朝鮮を擁護する姿勢を示した。

 北朝鮮のミサイルを故意に“過小評価”する露政府は、4日発射のミサイルに関しても北朝鮮発表の内容を大幅に下回る計測値を公表した。

 こうしたロシア側の態度に業を煮やすティラーソン米国務長官は28日、ロシアを「北朝鮮のミサイル開発を経済的に支援する主要国」だと中国と同列に扱って批判。

 だが、ロシアは米国が非難する北朝鮮との密接な経済関係は国連安全保障理事会の制裁決議に反していないとし、批判を受け入れる気配はない。リャプコフ外務次官は30日、北朝鮮経済を破綻させることに賛同できないと主張した。

 ロシアがこれほどまで北朝鮮の肩を持つのは、北朝鮮やシリアなど、問題を抱える国々に接近することで、「国際社会での発言力を高める」(露専門家)狙いがあると指摘されている。

 ロシアはこれまで、北朝鮮・羅先(ラソン)にある羅津(ラジン)港の改修を手がけたほか、同港につながる鉄道路線の軌道にロシア規格を導入するなど、着々と関係を強化。

http://www.sankei.com/world/news/170801/wor1708010013-n1.html

>>2以降に続く)

http://www.sankei.com/images/news/170801/wor1708010013-p1.jpg
米フロリダ州の別荘で、中国の習近平国家主席(右)と歩くトランプ米大統領=4月7日(AP)
http://www.sankei.com/images/news/170801/wor1708010013-p2.jpg