国連北朝鮮制裁委員会の専門家パネル委員を務めた古川勝久氏が、国連安全保障理事会による新たな対北制裁決議の評価と、日本の対応について寄稿した。



 新決議が徹底履行されれば、北朝鮮の外貨収入の大幅削減、非合法貨物の調達阻害など、強い圧力となる。全ての国連加盟国が迅速に全面履行することが重要である。さもないと決議は単なる紙上の文字に過ぎない。

 北朝鮮は必ずあらゆる手段を駆使して、すぐに新規制裁措置に適応するようになる。特に中国と東南アジアでの北朝鮮の制裁違反を押さえ込むことが重要だ。

 中国には政治的圧力だけでなく、丁寧なアプローチも必要となる。日本は中国や東南アジアと決議履行に関する実務協議を立ち上げて、効果的な制裁履行について建設的・実務的な協力を進めるべきである。実務レベルの国際協力の強化は火急の課題だ。

 同時に、決議違反の団体への単独制裁も決議に基づく義務である。中国や東南アジアなど、国を問わず、制裁違反企業・銀行に対する単独制裁を日本は抜本的に強化しなければいけない。

 日米主導で欧州連合も巻き込み、これら団体への「共同制裁」を通じて対北交易リスクを中国などの企業・銀行に認識させるべきである。

 日本も国内法不備で決議を完全履行できない。6月末の貨物検査法政令改正だけでは全く不十分である。日本の金融規制も国際金融作業部会で非常に評価が低い。法改正が必須だ。

 今後、北朝鮮の弾道ミサイル量産化を視野に、中期的にその抑制策を講じる必要がある。北朝鮮には、ミサイル開発の意味なしと理解させなければいけない。日本は米軍と北朝鮮試験発射ミサイルの海上迎撃を真剣に検討すべきだ。北朝鮮の核ミサイル戦力の無力化を見せつける段階に入った。

 また、欧米と協力して、北朝鮮の核ミサイル関連インフラに対する妨害工作も積極的に行うべきではないか。北朝鮮に必要な外国製品や調達ルートの情報はすでにある。細工した外国製品を戦略的かつ継続的に北朝鮮国内の目標に組み込ませるべきだ。軍事的手段の前にできることはある。

 ただ、これらは時間稼ぎにすぎない。最終的には米朝中心の外交的な解決が必要となる。金正恩氏が核ミサイル戦力増強以外の選択肢でも生存できることを理解させる必要がある。外交的対話の具体策についても日米間で詰めなければいけない。

 ■古川勝久氏(ふるかわ・かつひさ) 慶大卒、米ハーバード大ケネディ行政大学院修了、政策研究大学院大で博士号取得。専門は安全保障など。

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古川勝久氏(黒沢潤撮影)