韓国の文在寅大統領が、日本の植民地時代に朝鮮半島から動員された徴用工の日本企業への個人請求権は消滅していないとの見解を示したことで、日本政府が懸念を強めている。

1965年に締結した日韓請求権協定で解決済みとの立場と相いれないためだ。慰安婦問題と並び日韓間の新たな火種になりそうだ。

日韓国交正常化の際に結ばれた請求権協定は、日本から無償3億ドル、有償2億ドルの資金提供を約束。同時に、両国政府、国民間の請求権問題が「完全かつ最終的に解決された」と明記している。

だが、文氏は17日の記者会見で「両国間の合意が個々人の権利を侵害することはできない」と主張。文氏の発言は、日本企業に賠償を求める動きを誘発する可能性がある。

外務省は17、18両日、在ソウル大使館ルートで抗議。安倍晋三首相は18日、首相官邸で日韓議員連盟会長の額賀福志郎元財務相と会談した。額賀氏は21日に訪韓し、文氏と会談する予定。

この後、記者団に「どこに(文氏の)真意があるのか分からないところもあるので、率直に言うべきことは言う」と強調した。

日本政府にとって悩ましいのは、北朝鮮情勢の緊迫化を受け、韓国との連携を無視できないことだ。

額賀氏は首相の思いを代弁し、「朝鮮半島の安定のためにどうするかという(日韓)共通の認識を持っている。前に進むために努力したい」と語った。政府内では「文氏は足元を見ているのではないか」と反発する声も漏れる。

文政権は、「最終的かつ不可逆的な解決」をうたった慰安婦問題に関する日韓合意の検証も進めている。相次ぐ「蒸し返し」に、外務省幹部は「次から次に、いろいろある」とため息をついた。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2017081801084&;g=pol