【ソウル=桜井紀雄】韓国前大統領の朴槿恵(パク・クネ)被告と友人の崔順実(チェ・スンシル)被告への贈賄罪などに問われたサムスングループ経営トップでサムスン電子副会長の李在鎔(イ・ジェヨン)被告(49)の判決公判が25日、ソウル中央地裁で開かれる。収賄側とされる朴被告の公判への影響は避けられないが、「決定的証拠に欠ける」との見方もある。崔被告の国政介入事件に端を発した一連の公判は大きな山場を迎える。

「全て私の不徳の致すところです」。李被告は7日の論告求刑公判で、涙を見せながら語った。「私益のために朴前大統領に何かを頼んだり、期待したりしたことは決してない」とも陳述し、無罪を訴えた。

政府から独立して事件を捜査した特別検察官(特検)は、李被告が経営権を確立する上で不可欠とされた傘下企業間の合併で、朴前政権から便宜を受ける見返りに、崔被告の娘への乗馬支援などとして約束分を含め、

計約433億ウォン(約41億円)の賄賂を贈ったと事件を描き出し、李被告に懲役12年を求刑した。

合併に絡み大株主の国民年金公団に賛成するよう圧力をかけたとして、職権乱用罪などに問われた元保健福祉相は6月、実刑が言い渡された。ただ、判決は、朴被告の指示やサムスン側の不正な依頼があったかには踏み込まなかった。

焦点は、2014〜16年に3回行われた単独面談で、李被告が朴被告に経営権確立のための不正な依頼をしたのかという点だ。

面談では「乗馬支援が不十分だ」などと朴被告から叱責され、依頼どころではなかったというのがサムスン側の言い分だ。李被告は「父以外から叱られたのは初めてだった」と説明した。

その上で、サムスン側は、崔被告から支援を強要された「被害者だ」と主張する。さらに、起訴された別の元役員は、乗馬支援に崔被告が絡むことを、李被告には「報告しなかった」とも陳述した。

特検は、論告で「トップの承認なしに独断で支援したというのは常識に反する」と強調した。特検側には、こうした推論に基づく主張も散見され、「状況証拠でごり押しした」といった保守系紙や経済紙の論調も少なくない。

最高裁は1日付で1審・2審の判決公判のテレビ中継を認める決定を出した。公判への国民的関心の高まりを受けたもので、海外にも中継される初の1審判決になるかも注目される。



韓国最大の財閥サムスングループはトップが約半年にわたって拘束されているにもかかわらず、中核のサムスン電子は業績が絶好調だ。半導体メモリーの世界的な活況に支えられているためだが、当初懸念されたトップ不在による投資判断の停滞もみられない。

文在寅(ムン・ジェイン)政権が公約で掲げるなど財閥改革の機運も高まる中、判決で長期不在が確実となれば、サムスンで「脱創業家」の動きが加速するのは必至だ。

サムスン電子は昨年8月に発売したスマートフォン「ギャラクシーノート7」の発火事故を受けてリコール(回収・無償修理)対応に追われ、今年2月には同社の李在鎔副会長が逮捕・起訴された。

相次ぐ不祥事でブランドは傷つき、消費者のサムスン離れが進む可能性も指摘された。サムスン電子と取引が多い日本の電子部品メーカーも影響に警戒感を強めていた。

だが、蓋を開けてみればサムスン電子の4〜6月期の連結営業利益は前年同期比73%増の14兆700億ウォン(約1兆4千億円)と四半期として過去最高を更新。2017年通期の営業利益も51兆ウォンと過去最高に達するとの見方もある。

サーバー向けの記憶媒体に使う半導体が好調で、半導体部門が営業利益の6割弱を稼ぎ出した。不祥事によるブランドへの悪影響も顕在化しておらず、4月に発売した新型スマホ「ギャラクシーS8」の販売も順調に推移している。

トップ不在による意思決定の遅れもみられない。サムスン電子は4月以降、中国や韓国などで半導体メモリー工場に総額3兆円を超える投資を表明。一定の権限を与えられた幹部が的確な判断を下せる「グループとしての強さがある」とサムスン電子関係者は語る。

http://www.zakzak.co.jp/eco/news/170821/eco1708210004-n1.html

>>2以降に続く)