【まとめ】
・フィリピンの厳しい麻薬犯罪取り締まりを嫌がり、インドネシアが新たな流通ルートに。
・7月には過去最大級の覚せい剤密輸事件が発覚。
・ジョコ・ウィドド大統領が、犯罪者射殺を命じる異常事態に。

フィリピンのドゥテルテ大統領が進めている麻薬関連犯罪の容疑者に対する現場での容赦ない射殺、いわゆる超法規的殺人が最近再び増加傾向をみせている。

8月17日には首都圏警察マニラ市本部が大規模な麻薬犯罪取り締まり捜査を実施、24時間で70人を逮捕したが、その一方で25人を殺害した。

こうしたフィリピン当局の強硬な取り締まりで国際的な麻薬シンジケート、麻薬密売人が新たな東南アジアの市場、流通ルートとして選んだのがインドネシア。

そのインドネシアでは今年に入って麻薬犯罪が急増し、それに伴い麻薬犯罪容疑者を現場で射殺する事案も増えている現状で、昨年1年間のすでに3倍に上る事態となっている。

7月13日には首都ジャカルタの西方、バンテン州セラン県アニェルの海岸で台湾人4人が覚せい剤を陸揚げしようとしているのを摘発、2人を逮捕、1人を射殺、1人が逃走した。

この際押収された覚せい剤メタンフェタミンの結晶は総量1トンと1回の押収量としてはインドネシア麻薬犯罪史上で最大級のものとなった。

その後も芸能関係者などの麻薬使用容疑での摘発が相次ぎ「インドネシアはフィリピンの次の新たな麻薬密売の市場になっている」(ティト・カルナフィアン国家警察長官)と警告する事態となっていた。

麻薬犯罪には厳しい姿勢で臨んできたジョコ・ウィドド大統領も7月21日に麻薬捜査にあたる「国家麻薬委員会(BNN)」や警察の捜査官に対し「捜査の現場で抵抗する犯罪者には躊躇なく発砲し、射殺せよ」と異例の指示を出している。

■今年8月までに60人が現場で殺害

こうした大統領自らの「射殺容認指示」もあってか、インドネシアで今年8月までに麻薬犯罪捜査の現場で射殺などにより死亡した容疑者がすでに60人に達している。

これは人権団体アムネスティ・インドネシアによる調査結果で、麻薬取り締り当局はこうした具体的な数字を発表していない。

この数字は昨年2016年1年間での同様の死者18人と比較してすでに3倍近い数字となっており、フィリピン型の「超法規的殺人」がインドネシアでも定着しつつある可能性をアムネスティ・インドネシアは指摘している。

同組織のウスマン・ハミド代表はメディアに対して「麻薬犯罪がインドネシアで急増していることは深刻な社会問題であることは事実。しかし現場での容疑者の射殺は問題の根本解決にはならない」と当局の強硬策に警戒感を示している。

こうした人権団体やマスコミの指摘に対して麻薬取締当局や警察は「現場での容疑者殺害は捜査官の正当防衛や逮捕時の抵抗排除がその主な理由で法律を無視した殺害ではない」と説明している。

もっともこうした主張を裏付けることは難しく、実態が正当な武力の行使による殺害なのか、フィリピン流の超法規的殺人なのかは客観的に証明する手立てはいまのところないのが現状だ。

■麻薬犯罪に宣戦布告

ジョコ・ウィドド大統領は8月16日に議会で行った国家演説(施政方針演説)の中で麻薬問題に特に触れ「我々インドネシアの若い世代の将来を荒廃させる麻薬とその密売人たちに対して断固としてこれを排除するための戦争をここに宣言する」と麻薬犯罪に対する宣戦布告を行った。

インドネシア当局によると、人口2億5500万人のうち麻薬中毒者、麻薬使用者は6400万人に上るという。かつてインドネシアでは歓楽街やスラムなどでシャブシャブや金魚、スピードなどという名称で覚せい剤や合成麻薬が密売されていた。

ところが近年は7月に最大級の量が摘発された覚せい剤のメタンフェタミンの結晶が芸能人や主婦、労働者などの間で流行の兆しをみせているという。そして最近の麻薬関連犯罪で目立つのが密輸、密売に外国人の関与が多くなっていることだという。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170826-00010001-jindepth-int

>>2以降に続く)