近日、中国ではさまざまなメディアで独身者問題が取り上げられている。これまでとは異なる角度からの分析が引きも切らない。百花繚乱の趣きである。これほど身近にして切実でかつ深刻な問題は、他にないからだろう。

その中からニュースサイト「今日頭条」の特集を以下紹介しよう。

3000万人以上の「剰男」

国家統計局のデータによると1980〜2014年、中国の出生数は約6億7500万人だった。ただしこの34年間の平均性別比は、女100VS男114.7である。類推される正常値との比較では、男が女より3000万人以上多い状態だ。

専門家は、若い女性の希少価値は高く、嫁探しは困難を極め“剰男(余った男)”が密集して出現している。少なくない農村が“光棍村”の看板を掲げている。光棍とは男の独身者のことだが、ごろつき、与太者などの意味もある。

四川省のメディアは「10大独身集中地」なるランキングを発表した。ほぼ国土の主要部を覆っている。

10位 山東省
9位 北京市
8位 河北省
7位 上海市
6位 浙江省
5位 山西省
4位 広東省
3位 黒竜江省
2位 四川省
1位 天津市

2トップに一言ずつコメントを付け加えたい。

2位の四川省は、大量の出稼ぎ女性を沿岸部の大都市に供給していた。工場や飲食、サービス業など人手がかかるあらゆる分野にである。女性不足が深刻なせいだろう。

1位の天津は、古くからの工業都市で、工業への就職にためらいは持たない。しかし工場労働者との結婚はいやになってきたのだろう。

とにかく2020年になるかなり以前には、「毎日自分で洗濯物を干した後、仲間と小博打を打ち、少し酒を飲む。その後は周囲の反対を押し切って未亡人と結婚するのさ。」などと光棍たちはジョークを飛ばしていた。しかし、それが現実になってきたのである。

農村の男性と都市の女性

国家衛生計画委員会(厚生労働省に相当)家庭司編著“中国家庭発展報告2015”は、未婚男性は農村に集中しており、未婚女性は都市に集中と指摘している。都市へ出た女性はプライドが高く、自ら守備範囲を狭めている。

しかし農村の男性はそうではない。むしろ広げている。

専門家による300以上の農村調査では、各村に平均9.03人のいい歳をした未婚男性がいた。その80%は身体健康で障害はない。かつて農村では、24〜25歳の結婚していない男子の両親は焦り始めたものだ。今はそれが40歳になっている。

しかしもうどちらでも同じことだ。どうせ相手はいないのだから。すでに手元で紹介できる女性は、バツイチまたはバツ2しかいない。それでも5万元の結納金が必要だ。最近は女に数万元も騙し取られたなど足元を見られた話も多い。

悲惨な状況

ある農村に有名な医者、李先生がいた。彼の孫娘は評判の美女である。村の男たちはみな彼女が好きだ。追いかけずにはいられない。しかし彼女は何年も前に都市に嫁に行った人妻なのだ。それでも可能性は捨て切っていない。

都市には美女が多い。独身だけでなく、離婚した人もいる。それに都市の離婚率は高まる一方である。もう理想にはこだわらない。バツイチが出戻ってくる可能性にも賭けるのである。それでも農村の30男の半分以上は、生涯未婚になりそうな状態だ。

バツイチの未亡人と結婚し、両親ともども大変うまくいっている一家もある。人それぞれだ。しかしこうした男性のおかれている悲惨な状況は、経済にも有害である。マンションを買っても一緒に住む人がいない。

ここ数年の建築不況はこの影響が大きいのかもしれない。

2020年代には問題はますます深刻化する。まだ序章が始まったばかりだ。これまで中国ではあまり見られなかった自虐的な記事である。しかし中国人のユーモアセンスが磨かれたというには、ちょっと深刻すぎる。

とにかく今後“剰男”がさまざまな社会問題の火種となるのは間違いない。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

https://zuuonline.com/archives/168911