スポーツで精神力とは何か。必死に走ることでも、相手に激しくプレッシャーをかけることでもない。自分が持っているものを競技場で最後まで出し切ることだ。自分の能力と限界を正確に知って冷静に対処することのも精神力だ。

8月最後の日にソウル上岩(サンアム)W杯競技場で行われた2018ロシアワールドカップ(W杯)アジア地域A組最終予選第9戦の大韓民国−イラン戦。がけっぷちに追い込まれた韓国選手は必死に戦った。頑張るのは頑張ったが、効率的には戦えなかった。

韓国選手は精神的に武装していた。最近の代表チームの無気力なプレーで「太極戦士」に対する非難はピークに達していた。絶体絶命の危機に陥った韓国サッカーを守るために6万人以上の観客がソウルW杯競技場を埋めた。電光掲示板には「上岩の炎の地獄にようこそ」と表示された。大韓サッカー協会が配った赤いシャツを着た6万人の観客が立ち上がって一斉にクラッパー(応援用の紙)を振ると、競技場はあたかも炎の地獄のようにゆらゆら揺れた。

選手たちは闘志を燃やしていたが、冷静であるべきだった。しかし意欲が過剰だった。1トップの黄喜燦(ファン・ヒチャン、21、ザルツブルク)は猛烈に走ってイランのDFとぶつかったが、収穫はなかった。守備から攻撃につなぐ「ビルドアップ」過程は単純だった。ボールキープ能力が優れた具滋哲(ク・ジャチョル、28、アウグスブルク)を通さず、両ウイングの孫興民(ソン・フンミン、25・トッテナム)と李在成(イ・ジェソン、25、全北)は前半、ボールタッチが少なかった。

DFも焦ったプレーが続いた。主将の中央DF金英権(キム・ヨングォン、27、広州恒大)は3回のクリアミスで危機の瞬間を迎えた。右サイドバックのチェ・チョルスン(30、全北)はもともと体を張ってプレーするスタイルだが、この日もそのようなプレーが何度か見られた。闘志は見えるが、これは相手FWがフェイントをかければ間違いなくバランスを崩したりファウルを取られる危険な動作だ。チェ・チョルスンは結局、前半39分に激しいタックルをして警告を受けた。

むしろこの日、Aマッチデビュー戦となった中央DF金敏在(キム・ミンジェ、21、全北)があたかも百戦老将のように余裕のあるプレーを見せた。危機の瞬間にも落ち着いて相手の攻撃を断ち、前方に送るパスは「パスマスター」奇誠庸(キ・ソンヨン)を連想させた。前半19分のFK場面では身長(189センチ)を生かしたヘディングパスで張賢秀(チャン・ヒョンス、26、FC東京)に決定的なチャンスを作ったりもした。金敏在は後半6分、イランのMFサイード・エザトラヒの退場を引き出した。

数的優位になった韓国は激しく攻めた。しかし競技場を広く使うなどして1人少ないイランの守備を崩していくプレーは見られなかった。攻めてはいたが、これといった攻撃はなかった。

一方、イランはアジア最終予選A組8試合で無敗(6勝2分け)無失点を維持してロシアW杯本大会行きを決定したチームにふさわしい姿を見せた。

1人が退場した状況でも動揺することなく、自分たちの線の太いプレーを見せた。シンプルながらも相手陣営に向かう姿からは、一人の指導者の下で長期間築いてきた組織力が感じられた。

後半27分に李在成が抜け、196センチの長身FW金信旭(キム・シンウク、29、全北)が入った。しかし金信旭の頭に向けた正確なクロスを上げるには、韓国の攻撃があまりにも無秩序だった。

後半終了2分を残して、ついに「百戦老将」李東国(イ・ドングク、38、全北)が投入された。しかし李東国が何かを見せるには時間があまりにも短かった。後半ロスタイムに李東国が放ったシュートはゴールのはるか上を虚しく飛んでいった。終了直前に孫興民がペナルティエリア内でDF選手5、6人を引きつけたドリブルもゴールにはつながらなかった。

http://japanese.joins.com/article/954/232954.html

>>2以降に続く)