【ワシントン=黒瀬悦成】北朝鮮による「水爆」実験を受け、トランプ米政権は対北朝鮮戦略の練り直しを迫られるのは確実だ。

米政権は、北朝鮮との対話実現に向けた外交・経済的圧力に実効性を持たせるため、中国との関係が険悪化するのを覚悟で、北朝鮮の核・ミサイル開発に加担している中国の有力企業や金融機関への追加制裁に踏み切るかどうかの決断を強いられそうだ。

今回の核実験は、米国の祝日である「レイバーデー」の連休期間中に行われた。7月4日の米独立記念日に行われた大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射と合わせ、トランプ政権は北朝鮮から「核・弾道ミサイル開発を放棄することはない」との強烈なメッセージを突きつけられた。

トランプ政権は、国連安全保障理事会が8月5日に新たな対北制裁決議を採択して以降、北朝鮮情勢の緊張緩和を期待。ティラーソン国務長官は同月22日、近い将来の「米朝対話」の可能性にまで言及していた。

しかし、北朝鮮が同月29日の中距離弾道ミサイル発射に加え、国際社会の要請を完全に無視して核実験に踏み切ったことで、もはや米国からの自制要求を意に介していないことが鮮明となった。

トランプ政権としては、軍事的挑発のレベルを引き上げることで米国に圧力緩和などの譲歩を迫っているとみられる北朝鮮の思惑をはねつけ、安保理制裁や米国独自の制裁強化を模索するとみられる。

しかし、専門家の間では、トランプ政権が外交・経済的圧力路線を継続するのであれば、「北朝鮮を本格的に孤立させるため、対北全面禁輸を断行する覚悟が必要だ」(中国専門家のゴードン・チャン氏)との指摘も出ている。

北朝鮮が「水爆」実験に成功し、米情報機関の想定を上回るペースで弾道ミサイル開発を進展させているのは、中国から関連の資材や部品などが恒常的に流入しているためだ。

また、中国の大手銀行は北朝鮮の資金洗浄になお加担しているとされ、トランプ政権が締め付けを強化する余地はなお大きく残されている。

http://www.sankei.com/world/news/170903/wor1709030081-n1.html
http://www.sankei.com/world/news/170903/wor1709030081-n2.html


<北朝鮮核実験>米国「深刻な挑発、絶対黙認できない」

「北朝鮮の核実験は深刻な挑発で、絶対黙認できない」。米国のダンフォード米統合参謀本部議長は3日、韓国軍の制服組トップとの電話協議でこうした認識で一致し、「早期に軍事対応」をすると確認した。

韓国の聯合ニュースによると、米軍のステルス戦闘機F22などを朝鮮半島に展開することが検討されている。当面は追加経済制裁に加え、朝鮮半島周辺への戦略爆撃機派遣などを通じて緊張を高める方針とみられる。

6回目の核実験は経済的な圧力強化による中国頼みの戦略が破綻したことを意味しており、トランプ政権は「方程式の見直し」(米ワシントン・ポスト紙)など戦略の再構築を迫られている。

一方で、北朝鮮に対する直接的な軍事攻撃は日韓両国への「壊滅的な事態」(マティス米国防長官)を招く可能性が高い。北朝鮮への圧力強化と言っても、現実的には戦略爆撃機派遣など米軍主導でできる間接的な圧迫以外には対応策が見つからないのが実情だ。

仮に米国が北朝鮮に対する軍事攻撃に踏み切れば、韓国との境界に配備された北朝鮮の大砲約8000門が反撃し、ソウル市民約1000万人に加え、2万8500人の在韓米軍を含めた約10万人の米国人が危険にさらされる。

また、北朝鮮は短距離ミサイル「ノドン」や「スカッドER」を実戦配備しており、日本への攻撃も予想される。

米国内には、1998年に核実験に踏み切ったパキスタンのように「北朝鮮を事実上の核兵器保有国と認める」との妥協論から、「軍事攻撃に踏み切るべきだ」との強硬論までさまざまな主張が交錯している。【ワシントン会川晴之】

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170903-00000069-mai-int

http://www.sankei.com/images/news/170903/wor1709030081-p1.jpg
2日、ハリケーン「ハービー」の避難所で、被災者らとの記念撮影に応じるトランプ大統領(中央)=米南部テキサス州ヒューストン(ロイター)