日本政府が尖閣諸島を国有化してから、11日で5年。中国6大漁港の一つとも言われる浙江省象山県の石浦港からは、尖閣周辺を含む東シナ海に多くの漁船が出漁してきた。4カ月以上続いた休漁期間が16日に明けるのを前に、出港準備に入った漁船が港を埋め尽くす。

7日、漁船を眺める記者に近寄ってきた地元男性が誇らしげに言った。「1千隻が一斉に出港する。釣魚島(尖閣諸島の中国名)まで行くのもあるぞ」

港の間を行き来する「渡し船」を営む男性(52)が、「俺が案内してやる」と声をかけてきた。

ログイン前の続き渡し船から停泊中の漁船に乗り移ると、船内は荷物を運び入れたり網を手入れしたりする船員で慌ただしい。全長40メートル、総トン数100トン。日本の海上保安庁の巡視艇に相当する。

李という船長(50)は「数年前に釣魚島が肉眼で見えるところまで行った」と語った。港から尖閣までは200カイリほどで、1日余りでたどり着けるという。

「日本の巡視船が来たが、中国海警がしっかり守ってくれた」。今回も行くかと聞くと、李は「どこで漁をするかは自由だが、釣魚島だけは俺たちでは決められない」と慎重だった。

中国近海は乱獲が進み、魚が激減。漁船はより遠海の好漁場を目指す。別の船で船長を務める呉(62)は言う。「この時期はタチウオやマナガツオ。日本の(海保の)船さえ来なければ釣魚島は最高の漁場だ」

呉は、尖閣諸島付近へ行くかどうかは政府の指示だと明言する。「勝手に行くと海警に守ってもらえず、日本の船に追い払われるだけだ。中国でも違法扱いになる」。指示を出すのは地元政府か。そう問うと、空を指さし「もっと上、中央の命令だ」と答えた。

漁民の証言は、尖閣に向かう漁船群が政府の指揮と戦略に組み込まれていることを強く示唆している。

呉の漁船に乗る40代の船員によると、日本が尖閣諸島を国有化した5年前は、尖閣沖へ向かう漁船群に加わると年間100万元(約1700万円)の補助金が出た。金額は次第に減り、現在は25万元だという。今年、石浦から尖閣諸島へ向かったのは2隻だけ。その数と頻度は減っている。

「リスクが高い場所へはできれば行きたくない」。呉は、国策に巻き込まれることへの複雑な心境を隠さない。しかし、「尖閣諸島は誰のものか」と聞くと、即答した。「当然中国のものだ。今は力が足りないが、軍艦や公船が十分に俺たちを守れるようになれば、喜んで行く」=敬称略(浙江省象山県=冨名腰隆)

http://digital.asahi.com/articles/ASK987FDSK98UHBI02Q.html


【尖閣国有化5年】「中国やりたい放題」地元漁師や市議ら危機感、海保は「薄氷を踏む」警備

11日で国有化から5年を迎える尖閣諸島(沖縄県石垣市)。この間、周辺海域での中国公船の航行は常態化し、領海侵入も繰り返す。

海上保安庁は昨年2月、「尖閣警備専従部隊」を立ち上げて対応しているが、海保巡視船と中国公船とのにらみ合い状態が続いており、今も地元漁師が好漁場の尖閣周辺に容易に近づけない。日本固有の領土なのに、開発もできない状況だ。「いつまでこんな状態が続くのか」。漁師ら住民からは切実な声が漏れる。

機関砲搭載の公船も…示威行為加速させる中国

「長期戦になる」

5年前、中国公船が大挙して姿を現した際、海保幹部はこうにらみ、警備への覚悟をのぞかせた。当時、南シナ海に対し中国が実効支配を強めている状況で、尖閣も「そうなるのでは」と予測。海保は早くから専従部隊発足を模索し、着実に対応を進めてきた。

だが中国は公船の航行常態化に加え、示威行為を加速させている。約2年前からは機関砲を搭載した公船を派遣。海洋調査船による無許可の調査活動行為を繰り返す。

これに対し、海保の警備態勢は万全とはいえず、専従部隊の他からも応援を得てしのいでいる状況。幹部は「尖閣以外で事件や事故があれば船を融通するのが難しくなる。まさに薄氷を踏む思いだ」と危機感を募らせる。

好漁場なのに近づけず

http://www.sankei.com/west/news/170908/wst1709080101-n1.html

>>2以降に続く)