映画『軍艦島』が、今年7月、韓国で封切られた。日本軍に強制徴用された朝鮮人炭鉱夫の悲劇を描いた本作は、公開からわずか10日で観客動員数が600万人を突破。だが、実際に映画を観た韓国人の反応は冷ややかだった。

韓国の大手ポータルサイト「NAVER」の特設サイトに寄せられた評価は10点満点中1が全体の49%と最多で、史実とかけ離れた内容に非難が集中した。

「日本が歴史歪曲をするのは良くないが、韓国人がやっちゃダメだろ」「時代考証がまったくなっていない」「日本の子供が(映画を)観たら反省するどころか笑われるだけ」「日帝の蛮行を知らしめるなら、事実を突き詰めて映画を作らないと」

また、8月12日付の『韓国日報』は、軍艦島で徴用工として働いていたチェ・ジャンソプ氏(90)のインタビューを掲載。チェ氏は、「軍艦島での生活は捕虜より酷かった」としながらも、「日本人は島で亡くなった朝鮮人をきちんと弔い、祖国に送還していた。映画には想像が付け加えられているようだ」と、事実に反する点があることを指摘した。

戦時徴用に詳しい九州大学大学院の三輪宗弘教授が語る。

「朝鮮人内地移送計画が始まった昭和14年当時は希望者が多く、選抜で2人に1人しか日本で働けませんでした。昭和18年以降は空襲の激化などで応募者が減り、19年から徴用が始まりますが、移送中に朝鮮半島で逃げ出しても実際に罰則を科せられることはなかった。犯罪で強制送還された朝鮮人が再び日本に潜り込み、炭鉱で働いていた例もある。強制連行とは程遠い話です」

朝鮮人徴用工の賃金についても、日本人との差別は一切なかったと断言する。

「徴兵による日本人熟練工の減少に伴い、朝鮮人労働者の技量が向上した。結果、終戦間際には日本人との賃金が逆転する炭鉱もあったほどです。端島(軍艦島)では引揚の際、島民との別れを惜しむ朝鮮の人々がいつまでも船上で手を振っていたという証言もあります」

旧島民とその子孫らで構成する「真実の歴史を追求する端島島民の会」会長もこう話す。

「映画で描かれる奴隷労働などあるはずがない。炭鉱では古株の朝鮮人が新米の日本人を指導することもあり、終戦後『端島のほうが給料も良い』と島に戻ってきた朝鮮人もいました。狭い島内で朝鮮人への虐待や殺人が起こればすぐに耳に入るはずですが、そのようなことは一切ありません。端島には100世帯ほどの朝鮮人家族が暮らしており、子供たちは学校で机を並べ仲良く過ごしていました」

韓国人作家・金完燮氏もあきれ顔だ。

「強制連行されたという朝鮮人も当時は日本国籍を有する“日本人”であり、警察や軍関係者が違法行為を犯して連行するなどありえない。あまりに杜撰な時代考証に加え、日本人と結託し同胞を騙す朝鮮人が悪玉の中心人物として描かれたことも、映画が酷評された理由の一つだろう」

劇中で慰安婦を演じた女優、イ・ジョンヒョンが、「実際の歴史を見ても、朝鮮人が同じ朝鮮人を騙すことがあった」(韓国経済新聞・7月27日付)と発言、大炎上したことも失速の一因となった。総製作費約22億円を投じ「史上最大級の反日作品」との呼び声が高かった『軍艦島』だが、興行収入は目下、損益分岐点にすら届かない可能性があるという。

一方で、「映画は韓国が仕掛ける新たな“歴史戦”に大きく寄与し、一定の目的を達成した」と、在韓ジャーナリスト・藤原修平氏は指摘する。

「『軍艦島』が韓国政府の意向を受けたプロパガンダ作品であることは明白です。公開と連動し、米・ニューヨークのタイムズスクエアでは軍艦島の惨劇を訴える広報映像が一週間に亘り流されました。またユネスコ本部のあるパリでも駐仏外交官向けの試写会が行われ、欧米の人々に絶大なインパクトを与えました」

拓殖大学教授の呉善花氏も警戒を呼び掛ける。

「韓国政府には徴用工を慰安婦と同様の人権問題として世界にアピールする狙いがあります。すでに国際社会には慰安婦問題で“残虐な日本人像”が定着している。映画『軍艦島』で描かれた日本人の悪行が史実として認識されれば、それを覆すことは相当困難です」

韓国人も冷ややかな眼で見る“フェイクシネマ”が「史実」として世界に拡散されようとしている。

http://www.zakzak.co.jp/soc/news/170905/soc1709050029-n1.html