https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170922-00000016-ykf-int

 安倍晋三首相は20日午後(日本時間21日未明)、米ニューヨークで国連総会の一般討論演説を行った。国際社会の警告を無視して「核・ミサイル開発」を強行する北朝鮮について、「脅威はかつてなく重大で、眼前に差し迫ったものだ」「(過去の対話の試みは)無に帰した」「必要なのは圧力だ」などと訴え、安全保障理事会の制裁決議を完全履行するよう求めた。演説の大半を北朝鮮問題に費やす異例の内容で、10月衆院選(10月10日公示−22日投開票予定)でも同問題は最大の焦点となりそうだ。こうしたなか、在韓米国人の退避準備ともいえる動きが発覚した。 

 安倍首相は演説冒頭、法の支配や安保理改革など多岐にわたるテーマを挙げたうえで、「論点をただ1点、北朝鮮に関して集中せざるを得ない」と切り出し、「今そこにある危機」に言及した。

中略

 《「米国人避難作戦」の米実務者が来韓、対北軍事行動の前兆?》

 北朝鮮が「6回目の核実験」(3日)を強行した直後、エリザベス・コードレイ米国防次官補代理(計画担当)が訪韓し、韓国在住の米国人の避難作戦(NEO)を点検していたとして、「米国が北朝鮮に対する軍事行動を準備しているのではないか」との観測を紹介した。

 NEOとは、軍人ではない民間人(非戦闘員)を危険な場所から退避させる作戦を指す。韓国には約20万人の米民間人がいる。米軍は今年1月、北朝鮮の韓国侵攻を想定して、在韓米軍の家族を対象に、沖縄に避難する訓練を実施している。NEOのチェックが事実なら、米国が「米朝開戦」の覚悟を固めた印象も受ける。実は、同様の動きは8月にもあった。

 聯合ニュースは9日、CIA(米中央情報局)と国土安全保障省の情報要員数十人が韓国を訪れたと報じた。北朝鮮が、米領グアム周辺への弾道ミサイル発射を「予告」し、米国が軍事的な対応方針を示唆した時期だ。在韓米大使館と在韓米軍の米国人退避計画も点検すると報じた。

 トランプ政権首脳の言動も変化しつつある。トランプ氏は先の国連演説で、北朝鮮への軍事行動に言及したが、これまで慎重な発言を繰り返してきたジェームズ・マティス国防長官も18日、韓国の首都ソウルを北朝鮮の報復で「重大な危険」に陥らせることのない軍事的手段があると記者団に明かしている。米国は、北朝鮮への軍事行動に向けて、韓国の民間人や軍人家族の撤退準備を始めたのか。

 評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「CIA要員の訪韓は、私も事実関係を確認した。『先制的攻撃』や『北朝鮮からの攻撃』の可能性を含めて、今後、米民間人らを避難させる必要性が出てくるという前提で、米国が本腰を入れて対策を始めたと考えていいだろう」と指摘した。

 元韓国国防省北韓分析官で拓殖大客員研究員の高永チョル(コ・ヨンチョル)氏も「北朝鮮への『ピンポイント空爆』をいつごろするのか、という意思決定が迫っている証しだろう。ただ、米国は外科手術前の麻酔と同じように、北朝鮮のコンピューターネットワークや無線網、電力を麻痺させて、反撃できないようにしてから空爆する。在韓米国人を避難させなくても空爆に踏み切ることができる。北朝鮮への『だから挑発するな』『挑発したら終わりだ』というシグナルではないか」と分析した。

 在韓米民間人は約20万人。避難にはどれぐらいの期間が必要なのか。潮氏は「1カ月近くはかかるのではないか。とりあえず、米国は『頑丈な施設に避難させる』という検討をしているだろう。ソウルは核攻撃よりも火砲による攻撃の蓋然性が高い。頑丈な建物や地下に避難するだけで相当程度被害が極減できる」と語った。朝鮮半島に危機が刻々と迫っている。