[ソウル 22日 ロイター] - 北朝鮮が今月、過去最大規模となる6回目の核実験を実施したが、会社員のYou Jae-younさん(32)はもっと身近な心配事で頭がいっぱいで、そのニュースのことなどすぐに忘れてしまったという。

「日常生活のなかで、心配しなければならないことは山ほどある。個人的には、食費がどれくらいかかるのかということの方が(北朝鮮よりも)心配だ」と、韓国中部の世宗特別自治市に住むYouさんは話す。

「正直言って、北朝鮮は私には遠い話だ」

敵対的で今や核武装している隣国との戦争の脅威にさらされて何十年も暮らしている韓国の一般市民の大半にとって、夜も眠れないほどの心配事と言えば、仕事や経済、そして1953年の朝鮮戦争休戦後の急速な発展に伴うプレッシャーなど、より日常的な懸案だ。

実際に、韓国の国民が戦争の脅威にますます無関心になっていることを示す証拠もある。市民防衛訓練はほとんど無視され、世論調査では、軍事衝突が起きると考えている人は四半世紀前と比べて減少している。

今月に公表されたギャラップ・コリアの調査によると、韓国人の58%が朝鮮半島で再び戦争が起きるとは思わないと回答している。同調査が1992年に開始されて以来、2番目に高い割合だ。

また戦争が起きると予想する韓国人の割合は、調査開始以降減少し続けており、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の下でミサイル発射実験が急増しているにもかかわらず、最新の調査では37%にまで落ち込んでいる。

韓国と北朝鮮は厳密に言えば、今でも戦争状態にある。朝鮮戦争(1950─53年)では平和条約は結ばれておらず、休戦協定で終わりを迎えたからだ。

「朝鮮戦争は厳密には終わっていないと人々は言うが、私の世代は戦争を見たことがない。私には曖昧な現実としか映らない」と、27歳のグラフィックデザイナーKim Hye-jiさんは言う。「だから、危険だと言われても、私には実感がない。友人たちも皆、それよりも仕事のことを心配している」

<ストレスと自殺>

ハイテクで輸出主導の韓国経済は、成長の回復が遅れ、減速が長期的な傾向となることが心配されている。

雇用の安定も懸念されている。韓国の非正規雇用者数は、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の2倍に上り、若者の失業率は2013─16年にかけて4年連続で上昇している。

雇用状況の悪化は、競争の非常に激しい韓国の学校や職場の環境をいっそう悪くするだけだ。こうした環境が、同国でストレスと自殺率が高い要因とみられている。

韓国の自殺率は2015年、OECD加盟国のなかで最も高かった。米国の2倍以上、英国のほぼ4倍だった。

韓国自殺予防学会によると、自殺につながるうつ病を引き起こす主な原因は、金銭問題、病気、孤独、人間関係である。北朝鮮についてはまったく言及がない。

続きます。
2017年9月24日 / 09:08
https://jp.reuters.com/article/south-korea-society-missile-idJPKCN1BX0TW