中国と韓国の通貨スワップの期限が、あと3週間ほどに迫ってきた。韓国国内の論調は、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配置に対する中国の報復が止まないため「延長なし」の悲観論で一色だ。

しかし、これまでの中国の“手口”を見れば「ごく事務的なスタイル」を装っての自動延長もあり得るのではないか。もちろん、韓国をさらなる奈落に引き込む策略だ。

中国と韓国は現在、560億ドル(約6兆2420億円)規模のスワップ協定を結んでいる。韓国にとっては大きな保険だ。だが、通貨スワップとは、通貨の相互融通だ。

韓国は借りることしか想定していないが、中国から「人民元を送るから、560億ドルを貸してほしい」と言われたら、貸せるような余裕資金はない。

一方の中国は「世界一の外貨保有高」と誇っているが、財政はガタガタだ。鳴り物入りで開業したアジアインフラ投資銀行(AIIB)の体たらくを見れば、韓国が「ウォンを送るから560億ドルを」と懇請したとき、応じる力があるのかどうか。

韓国としては、何よりも2016年1月、北朝鮮が水爆実験をした直後、国防相が軍事ホットラインで中国に呼びかけたのに、中国側からは誰も出てこなかったことを思い出すべきだろう。

どうせ中身のない協定なら、中国としては政治折衝の場に持ち込まず、「自動延長しましょう」と簡単にささやいてやることが得策になろう。

韓国はヌカ喜びして「中国はやはり大国だ」と思うだろう。

そして、現代・起亜グループの中国での販売不振については「現代・起亜の技術力の問題が大きい。現代・起亜は米国市場でも売れていないのだから」と、韓国の論調は変化するのではないか。ロッテグループについても「そもそも中国の行政法に違反していたから」と。

左翼紙は「文在寅(ムン・ジェイン)大統領の手柄」と、はしゃぐだろう。結果として文政権は、空証文にも等しい協定の自動延長により、中国から大恩を施された借りをつくることになるのだ。

「延長なし」だったらどうなるか。すでに韓国の経済界は「延長なし」を織り込み済みだが、「THAAD報復はさらに強まる」と見て、小パニックになるだろう。そして、「保険なしの経済運営は心細い」というわけで、日本の親韓派政治家を動かして日韓スワップの再構築に動き出すだろう。

昨年のいまごろ、韓国の企画財務省の幹部は「自国通貨を預け入れてドルで借りるというドルベースのスワップになる可能性が高い」などと述べていた。イザというとき、日本からドルを借りることしか考えていない。

日本は米国と無制限のスワップを結んでいるから、日本が韓国から借りることはあり得ない。これでは「スワップ」ではない。

それでも日本政府として韓国を見捨てるわけにはいかない−というのなら、「借款協定」がいい。もちろんのことだが、利率はカントリーリスクに見合う高さでなければならない。

■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。主な著書に「韓国人の経済学」(ダイヤモンド社)、「悪韓論」(新潮新書)、「呆韓論」(産経新聞出版)、「ディス・イズ・コリア」(同)などがある。

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