昨年4月、バハマで開かれた米州開発銀行(IDB)年次総会でユ・イルホ当時の経済副首相兼企画財政部長官は、周小川中国人民銀行総裁と通貨スワップ契約の満期延長に原論的に合意した。しかし、今年からサード配置の葛藤で状況が反転した。

今年の初め、サード2基の配置決定後に冷え込んだ両国関係は、7月末の追加配置の決定後さらに悪化、王毅中国外交部長は8月6日に韓中外相会談で「韓国政府が7月28日、サード(追加)配置を決定し、両国関係に冷水を浴びせた」と話した。

韓国銀行と政府は、政治と経済は分離してアプローチするという、いわゆる「政経分離」の原則で交渉に臨んだが、両国の外交関係の葛藤に負担を感じた人民銀行が再契約に負担を感じる状況と見られる。今年の初めから実務協議を進めてきた韓銀も7月以降、なかなか糸口を見い出せていないことが分かった。

ムン・ジェイン大統領は先月27日、与野党4党の代表との晩餐会で「通貨スワップ問題は両国の公式発表の前に一方が発表するのは難しいが、韓中通貨スワップの延長が関係改善のサインであるという点は共感する」とした。困難な状況であるが、期待感を示したものである。

しかし、両国通貨スワップが霧散する危機に立たされたことから、政府と韓国銀行がプランB(代案)を準備しなければならないという指摘が出ている。外貨準備高をより十分に積み重ね、他の主要国との通貨スワップ契約の推進にも積極的に乗り出すべきということだ。

ソン・テユン延世大経済学部教授は、「中国との通貨スワップ延長が失敗に終わる可能性に備え、国内外貨準備高を安定的に運用しなければならない」と述べた。アン・ドンヒョン資本市場研究院長は「サード配置問題で韓中通貨スワップが失敗に終わったことを、今後の米国とのFTA(自由貿易協定)などの経済交渉の過程で積極的に知らせ、実利のバランスを取ろうとする努力が必要だ」とした。

韓中通貨スワップの代わりに、米国、日本などの基軸通貨国との通貨スワップを推進しなければならないという意見もあるが、現実には容易ではない。米国とは、2008〜2010年に300億ドル規模の通貨スワップを締結したが、世界的な金融危機に対応した一時的な措置であった。日本とは最大700億ドル規模の通貨スワップ契約を締結したが、外交的葛藤で徐々に規模が縮小され、2015年2月に全面終了した。

一方、韓中通貨スワップの霧散以降の、国内適正外貨準備高の水準にも関心が集まっている。韓銀によると、今年8月末の外貨準備高の規模は3848億4000万ドルで史上最大である。国際通貨基金(IMF)、国際決済銀行(BIS)基準によると、国内の輸入額、通貨量、外国人証券投資額などを考慮した適正外貨準備高の規模は2800億〜4400億ドルと推定される。イ・ジュヨル韓銀総裁はこれに先立ち、「国内外貨準備高が不足している状況ではない」という立場を明らかにした。

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