北朝鮮による核・ミサイル開発で世界的に危機感が高まる中、サイバー空間では北朝鮮との「見えない戦争」がますます激化している。

野党・国民の党に所属する朴柱宣(パク・チュソン)議員は7日、「統一部(省に相当、以下同じ)および統一部の傘下機関を対象にしたハッキングなどサイバー攻撃の件数は、この5年間で4193件に上る」と発表した。

朴議員が統一部から受け取った資料によると、ハッキングなどのサイバー攻撃4193件のうち43.5%(1826件)が中国のIPアドレスからのものと判明しており、これは北朝鮮の仕業である可能性が高いと分析されている。サイバーセキュリティー関連の韓国政府当局者らは「サイバー空間では毎日、北朝鮮との交戦が繰り広げられている」と語った。

北朝鮮のハッカーが世界的に注目され始めたのは、2014年11月に起こったソニー・ピクチャーズ社への不正アクセスからだ。ソニー・ピクチャーズは金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長暗殺が題材の映画『ザ・インタビュー』を手掛けており、北朝鮮が同社をハッキングしたことを受け、米国の捜査機関などは北朝鮮のハッカー組織を集中的に追跡し始めた。

ノベッタ、カスペルスキー・ラボ、シマンテックなど世界的なセキュリティーベンダーも「オペレーション・ブロックバスター」という名称の共同追跡作戦を展開。その結果、「ヒドゥン・コブラ」「ラザロ」「ブルー・ノロフ」「アンダリエル」などと呼ばれる北朝鮮ハッカー組織の実態が判明した。

韓国警察庁は、これらの集団が主に使用するIPアドレス帯域に基づいて「平壌柳京洞グループ」「中国遼寧省グループ」「朝鮮逓信省グループ」などに区分している。

北朝鮮のハッカーはもともと、韓国の主要政府機関のウェブサイトを攻撃したり、情報を盗み取ったりすることにサイバー戦力を集中していた。韓米の主な機関のウェブサイトをマヒさせた2009年の「7・7テロ」以来続いてきた、分散型サービス妨害(DDoS)攻撃が代表的だ。

昨年8月には、北朝鮮が韓国国防部の内部および外部ネットワークを一挙にハッキングし、作戦計画が外部に流出する事件も起きた。しかし最近では、外貨稼ぎ用のサイバー攻撃が増えている。

先月起こった韓国のビットコイン取引所4カ所に対するハッキングの試みや、韓国国内の現金自動預払機(ATM)をハッキングしておよそ1億ウォン(約980万円)を盗み取った事件の黒幕は、北朝鮮でサイバー戦を担当している偵察総局121局だったことが明らかになった。

既に北朝鮮のハッカーは、バングラデシュ中央銀行がニューヨークの米国連邦準備銀行に開設していた口座を昨年2月にハッキングして8100万ドル(約92億円)を奪って以降、1年間に世界およそ30カ国、100以上の金融機関を無差別に攻撃してきた。今年5月に世界およそ150カ国、30万台以上のコンピューターに感染したランサムウエア「ワナクライ」の背後にも、北朝鮮のハッカーグループがいた。

これに伴い、世界の主要国が北朝鮮ハッカーとの「サイバー戦争」を繰り広げている。英国では今年5月、国民保健サービス(NHS)傘下の病院や診療所のコンピューターが攻撃を受け、手術など診療がストップするという事件が起きた。

これについて英国政府通信本部(GCHQ)元長官のロバート・ハニガン氏は今月1日、ザ・タイムズ紙のインタビューで「北朝鮮はハッキングの『プレミアリーガー』になる直前。北朝鮮のミサイルは英国に届かないが、北朝鮮のハッキングは既に英国のNHSや、ほかの欧州諸国の一部に到達した」と語った。

金真明(キム・ジンミョン)記者

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