北朝鮮のミサイルが周辺国を脅威に陥れる中、アジアの盟主であるべき日本は、解散・総選挙となり、事実上の選挙戦に突入している。

各国が日本の行く末を見守っているが、特に日本の未来を案じているのが、台湾の李登輝・元総統だ。

今年で94歳を迎えた李氏は、1988年から12年間にわたって総統を務め、台湾の民主化に大きく貢献。総統退任後も、中国の圧力に屈せず、長年にわたって日本と台湾の友好関係を築き上げてきた。

その李氏が9月26日、台北市内の私邸・翠山荘で、1時間半にわたって幸福の科学グループと会見。緊迫する北朝鮮情勢や日本の政治家に求められるリーダーシップなど多岐にわたるテーマについて語った。

自分の国は、自分で守る。それが憲法改正の目的

核開発とミサイル発射で近隣諸国への恫喝を続ける北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長について、「何とかしないといけない。アジアにとって危険だ」と早急な対処が必要であることを強調した。

金正恩氏がグアムに向けてのミサイル発射を予告していたことについても、「日本を脅迫する態度である」とした。日本国内の混乱を誘い、日米同盟を分断する心理作戦であることを示唆した。

こうした情勢における日本政府のあり方については、「北朝鮮への対応は、アメリカに影響されている。しかし、アメリカの姿勢がはっきりしない。韓国の文在寅大統領の態度も、はっきりしない」と述べ、東アジア情勢の混迷のなかで、他国に依存する日本外交への懸念を示した。

同時に、日本政治の課題として、「だから、憲法9条を改正すべきだ」と指摘し、「自分の国は、自分で守る。それが、憲法改正の目的なんだ」と語った。

日本政治は目覚めるべき

日米関係についても、「日本がアメリカを頼るだけでなく、アメリカも日本を必要としている」として、日本の政治力が発揮されることへの期待を示した。

世界最強の米軍を擁するアメリカの覇権は揺るがないように見えるが、2008年のリーマン・ショック以降の世界経済のなかで、アメリカ経済が退潮を見せ始めているのも現実だ。しかし、日本経済には、アメリカを支える潜在力がある。李氏は、日本の政治に自覚を促しているのだ。

経済政策についても、「日本のGDP成長率は1.5%ぐらいではダメだと、安倍総理にも以前から投げかけているんだ。日本は、少なくとも、年4%くらいのGDP成長を目指さないといけないんだ」と提言した。

近年、李氏は、アベノミクス3本の矢において、金融政策、財政政策のほかに、成長戦略が重要であることを指摘してきた。

中国人は、日本人が絶対に持たない考え方をする

李氏は、1996年の台湾総統選の最中、中国が台湾海峡に向けてミサイルを撃ち込んだ「台湾危機」について、こう振り返った。

「海軍の演習といってミサイルを撃ってきたが、怖気づいたらダメなんだ。日本人は、中国人というのを知らない。中国人は、日本人が絶対に持たない考え方をする。日本人は正直すぎる」

李氏は台湾を守るために、中国政府と堂々と渡り合ってきた政治家だ。この実感がこもった発言は、日本人にとって大いに示唆に富んでいる。現在の中国経済の状況についても、「中国が世界第2位のGDPというのは、信じられないね。中国の国民の生活状態から見ても、ちょっと考えられない」と率直に語った。

指導者の信念を支える原動力は信仰

リーダーの心得について問うと、近年の日本政治の迷走を指摘。2011年当時の民主党政権を、次のように振り返った。

「東日本大震災のときの菅直人総理には、『指導者として、これではいけない』と批判した。国民が苦しんでいるときには、その困難を解決してあげようという気持ちがなければいけないんだ」

また、現在の緊迫する東アジア情勢をふまえながら、政治家の責務の重大さについても指摘した。トルストイの『戦争と平和』にふれつつ、「指導者にとっては、戦争するかしないかということは、本当に大切な決断です」と述べた。

こうした政治家の使命を語るなかで、会見の最後に、李氏が強調したのは、指導者にとっての信仰の問題だ。

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>>2以降に続く)