【ワシントン=黒瀬悦成】ティラーソン米国務長官は18日、ワシントン市内で講演し、経済発展が著しい太平洋・インド洋地域の新興諸国に対しての中国によるインフラ投資に関し、「中国の融資を受ける国々の多くは膨大な債務を背負わされる」と指摘した。

また、「インフラ整備事業には外国人労働者が送り込まれる事例が大半で、雇用創出に結びつかない。融資の仕組みも、些細なことで債務不履行に陥るようにできている」と批判。

米国を中心に東アジアサミット参加国の間で、中国に対抗する形での代替の融資枠組みの構築に向けた協議がすすめられていることを明らかにした。

ティラーソン氏は一方、中国が南シナ海で造成した人工島の軍事拠点化を進めていることについて、「国際的な法や規範に対する直接的な挑戦だ」と指摘し、「中国は法に基づく国際秩序をしばしば侵害している」と強く批判した。

トランプ政権はこれまで、北朝鮮の核・ミサイル開発問題で中国の協力を取り付ける思惑からこの問題で批判を自制してきた。今回、歴代米政権のアジア太平洋政策を踏襲し、米国主導による「法と規範」に基づいた地域の安定化を進めていく意向を打ち出した。

ティラーソン氏は「中国とは建設的な関係を目指していく」と述べつつ、「中国が法に基づく秩序に挑戦し、近隣諸国の主権を侵害し、米国や友好国に不利益を生じさせる行為に対してひるんだりはしない」と強調した。

また、民主主義の価値観を共有するインドと日本、それにオーストラリアを加えて安全保障分野などでの連携を強め、太平洋からインド洋にかけての安全と安定を確保していく立場を表明した。

http://www.sankei.com/world/news/171019/wor1710190037-n1.html


中国、債務爆弾に恐々 対GDP比200%超、デフォルト近づく 習指導部綱渡り

【北京=河崎真澄】中国のGDP成長率が小幅減速した。5年に1度行われる中国共産党大会の開幕2日目に、習近平指導部が経済政策で「安定成長路線」へのシフトをにじませた形といえる。

1〜6月は6・9%成長を確保しており、7〜9月もそれ以上の成長が見込まれていたが、8月に国際通貨基金(IMF)が公表した「中国経済に関する年次審査報告書」がブレーキをかけたとみられている。

報告書は、中国の債務問題について「中長期的に成長を急減速させる恐れがある」と警告した。前後して海外の格付け機関も、中国の長期格付けを債務問題を理由に相次ぎ引き下げており、国際金融市場では「チャイナリスク」がにわかに意識され始めた。

IMFによると、名目GDPに対する債務総額の比率は既に200%を超えて、今後5年で300%に膨れる。デフォルト(債務不履行)など、危険水域に近づく懸念が増大する。

今年は党大会を控え、年初から公共事業で景気を刺激してきた。通年ではなお前年を上回る可能性もあるが、「成長ありき」が続けられなくなったことは、習氏が18日の演説で、「金融管理体系を完備させて、金融システムリスクを起こさないという最低ラインを守る」と述べ、自覚していることからも読み取れる。

地方政府や国有企業の資金調達で、十分な担保もない状態で外部の審査もないまま、国有銀行から多額の融資を受けることが常態化した中国。ひとたび不動産市況が悪化すれば、担保価値をなくす物件が多発。債務不履行に陥る。いわば借り手も貸し手も「モラルハザード(倫理の欠如)」の負の連鎖を続けている。

水面下で膨張が続く債務問題をいかに処理して、安定成長を維持するか。習指導部2期目の5年間も、綱渡りの経済運営が続く。

http://www.sankei.com/economy/news/171019/ecn1710190054-n1.html